嵐の海 (マネ)

エドゥアール・マネの『嵐の海』

エドゥアール・マネが手掛けた『嵐の海』（あらしのうみ、原題：Sea in Stormy Weather）は、1873年に描かれた代表的な油彩作品です。この絵画は、高名な美術コレクター松方幸次郎により購入され、長らくフランスに保管されていましたが、第二次世界大戦による影響で所在が不明となっていました。しかし、2012年にグルリット・コレクションの一部として再発見され、その後は日本の国立西洋美術館で所蔵されています。

背景と制作過程

マネは十代のころ、海軍兵学校を志望していたこともあり、海に魅了されていました。彼は1870年代に、さまざまな地域で海景を描くことに情熱を注いでいました。『嵐の海』は、ノルマンディー地方ベルク＝シュル＝メールに滞在していた際に制作されたと考えられています。この作品は、マネがその時期に感じた海のダイナミズムと緊迫感を表現したものです。

作品の特徴

本作は、深い緑のトーンを基にした荒れた海の風景が描かれています。2艘の船が省略された筆致で表現され、その周囲には嵐の前の静けさが広がっています。最小限のモチーフと色彩で構成されているにも関わらず、画面全体には嵐が迫る様子が力強く表現されています。この対照的な構図が、観るものに強い印象を与えています。

来歴と所有者の変遷

『嵐の海』は、マネの死後に売り出され、複数の所有者を経て1922年に松方幸次郎が取得しました。しかし、川崎造船所の経営破綻に伴い、松方コレクションが分散していくこととなり、この作品もその運命に巻き込まれました。当時、松方の部下である日置釭三郎が管理していた作品群の中で、第二次世界大戦中の資金不足により、本作も売却され、画商アンドレ・シェーラーを経て、ナチスの協力画商であるヒルデブラント・グルリットのコレクションに加わりました。

このようにして、本作は1980年代まで行方がわからなくなっていましたが、2012年にヒルデブラント・グルリットの息子コルネリウスが脱税捜査を受けた際に、彼の所有するアパートから1279点の絵画とともに再発見されました。その後、コルネリウスは2014年に亡くなり、遺言によってこの作品はベルン美術館へ寄贈されました。

日本への収蔵

さらに、日本にとっても重要な出来事として挙げられるのは、2019年に国立西洋美術館で開催された松方コレクション展において本作が展示されたことでしょう。その後、ベルン美術館から国立西洋美術館へと作品が売却され、現在はこの美術館で一般に公開されています。

『嵐の海』は、その魅力的な視覚体験だけでなく、 tumultuousな歴史をも持つ稀有な作品です。多くの観客にとって、この絵画はマネの才能を感じさせる貴重な体験を提供しています。

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