嵩山蛇穴

嵩山蛇穴（すせのじゃあな）

愛知県豊橋市嵩山町にある嵩山蛇穴は、縄文時代の貴重な遺跡として知られています。1957年7月1日に国の史跡に指定され、その歴史的価値が認められました。場所は嵩山から本坂峠への登り口近くに位置し、深さ約50mの鍾乳洞が、かつて縄文人の住居として利用されていたと考えられています。

遺跡周辺の環境

本坂トンネルの南西部一帯には、石灰岩質の地形が広がり、嵩山蛇穴のような洞窟や鍾乳洞、風穴などが点在しています。これらの地形は、国の史跡として保護されています。特筆すべきは、この洞窟が東海地方の固有種であるジャアナヒラタゴミムシ（Jujiroa ana）の基準産地として記録されていることです。この地域は、生物多様性の観点からも重要な場所と言えるでしょう。

街道に近い静岡県三ケ日町の石灰採石場では、新人段階の化石人骨（三ヶ日人）が発見されており、周辺には縄文遺跡や弥生遺跡が数多く存在しています。本坂峠を越えるルート自体も、縄文時代から利用されていたと考えられています。

遺跡の概要

嵩山蛇穴は、標高140メートルの山腹に位置する石灰洞（鍾乳洞）であり、縄文時代草創期から早期にかけての人々の生活痕跡が残されています。1941年に小栗鉄次郎によって初めて調査され、その後1947年までに4回の調査が行われました。洞窟の入口は高さ1.3メートル、奥行きは約70メートル。入口付近からは炉の跡が見つかり、土器、石器、骨角器などが出土しています。

出土した土器には、縄文草創期の表裏押圧文土器片をはじめ、早期の押型文土器、前期・中期・晩期の縄文土器が含まれています。また、土器片を円形に加工したものや、貝刃なども見つかっています。動物の骨としては、イノシシ、ニホンジカ、タヌキの骨、貝類ではハマグリ、ヤマトシジミなどが出土しており、当時の人々の食生活をうかがい知ることができます。

遺跡が語るもの

嵩山蛇穴は、縄文時代の人々が自然の地形を利用して生活していた様子を今に伝える貴重な遺跡です。出土品からは、彼らの知恵や工夫、自然との関わり方を学ぶことができます。また、この地域特有の生物が生息する場所としても、その価値は計り知れません。歴史と自然が織りなす嵩山蛇穴は、私たちに多くのことを教えてくれるでしょう。

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