風穴

風穴とは

風穴（ふうけつ、かざあな）とは、地中にある洞窟と外部との間に気温差や気圧差が生じることで、風の流れが発生する地形のことです。洞窟の出入り口から空気が循環する様子が体感できるのが特徴で、英語では「blowing cave」と呼ばれます。風の力で形成された洞窟を指す「wind cave」とは異なるため、注意が必要です。

名称について

風穴は「ふうけつ」とも「かざあな」とも読まれます。近世までは「かざあな」が一般的でしたが、明治時代に蚕種貯蔵風穴が各地に作られるようになり、「ふうけつ」という呼び方が広まりました。しかし、地域によっては現在も「かざあな」という名称が使われています。また、風穴の形状や用途によって「かざあな」と「ふうけつ」を区別する地域もありますが、全国的に統一された定義はありません。

風穴の形成

風穴は、比較的新しい時代の火山岩地帯や、石灰岩地帯（カルスト[[地形]]）に見られます。また、岩の割れ目（開口節理）や、崖錐などの堆積物の隙間などからも形成されます。風穴内部の空洞は、複数の出入り口で地表と繋がっており、冬場には暖かい空気が上から出て、冷たい空気が下から入るという空気の流れが生まれます。夏場でも洞窟内は温度が上がりにくいため、冷たい空気が吹き出す仕組みとなっています。この現象は自然の洞窟だけでなく、人工的な空洞でも発生することがあります。

風穴は、大きく分けて溶岩トンネルによるものと、崖錐などの堆積物の隙間によるものがあります。特に後者の「崖錐型風穴」は日本に多く見られます。

風穴の環境

風穴周辺は、風穴が作り出す低温環境の影響で、寒冷な気候で生育する植物が見られることがあります。長走風穴や中山風穴では、高山植物の群落が確認されており、国の天然記念物に指定されています。これらの植物は、氷河期の植物が生き残った場所（レフュージア）であるという見方もあります。

風穴の利用

風穴は、古くから人々の生活に利用されてきました。江戸時代には、漬物の保存に利用され、明治時代には養蚕用の蚕の卵の保存に利用されました。風穴の上に建てられた「風穴小屋」は、全国に280カ所以上あったとされています。冷蔵庫の普及によって風穴小屋は衰退しましたが、近年では、種子や酒の保存に利用される例も見られます。

また、風穴は観光地としても人気があり、特に夏場は涼を求めて多くの人が訪れます。溶岩トンネルを利用した洞窟や、避暑地として整備された風穴公園など、様々な形で活用されています。

養蚕業と風穴

江戸時代までの養蚕は、年に一度しか行えませんでした。しかし、風穴を利用して蚕の卵を低温保存することで、孵化の時期を調整することが可能になりました。この技術は、明治時代に全国に広まり、養蚕業の発展に大きく貢献しました。その後、人工孵化技術の普及によって風穴の利用は減少しましたが、東日本大震災の際には、電力不足を補うために再び風穴が活用されました。

風穴の一覧

世界には多くの風穴が存在しますが、ここでは日本国内の代表的な風穴をいくつか紹介します。

北海道・東北地方: 武利風穴、天狗森夏氷山風穴、相良八郎の穴、長走風穴、三関風穴、皆瀬川の風穴、関口の風穴、ジャガラモガラ、中山風穴
関東地方: 荒船風穴、東谷風穴
中部地方: 荒島風穴、越智風穴、大谷風穴、富岳風穴、富士風穴、鳴沢氷穴、氷平風穴、氷風穴、入沢風穴、村松の風穴、稲核風穴、小野の風穴、古関風穴、有穂風穴、万野風穴、駒門風穴、古戸の風穴、篠立の風穴
近畿地方: 河内風穴、佐目風穴、神鍋風穴
中国地方: 乳房杉の風穴、秋芳洞、笠山風穴
四国地方: 高鉢風穴、大成風穴群
九州地方: 永野の風穴、普賢岳 北の風穴、普賢岳 西の風穴

これらの風穴の中には、天然記念物や史跡に指定されているもの、観光地として整備されているもの、現在も冷蔵庫として利用されているものなど、様々な形で活用されています。

地形以外の「風穴」

「風穴」という言葉は、地形としての意味以外にも、様々な意味で使われます。

風の通り道: 単に風が吹き抜ける穴や隙間を指す言葉として使われます。
換気口: 壁などに設けられた換気用の穴を指します。
心の空虚さ: 比喩表現として、心にぽっかりと開いた穴を「風穴」と表現することがあります。
攻撃: 刺突武器や弾丸で体に開けられた穴を指す言葉として使われ、「風穴を開ける」という表現は、脅し文句として使われることもあります。
変革: 古い慣習や停滞した状況に変化をもたらすことを、「風穴を開ける」と表現することがあります。

風穴は、その自然の力と、人々の生活との関わりによって、様々な意味を持つ言葉として使われています。

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