嶋野三郎

嶋野三郎の生涯と業績

嶋野三郎（しまの さぶろう、1893年 - 1982年1月24日）は、石川県出身の著名なロシア研究者であり、日本におけるロシア文学や思想の普及に大きな貢献をした人物です。彼は多岐にわたる著作を残し、特に翻訳や辞典の編纂活動で知られています。

若き日の学びとロシアとの関わり

1911年、嶋野は金沢第一中学校を卒業しました。その後、石川県の県費留学生としてロシア語を学ぶためにウラジオストクへ渡ります。この研修期間中、彼は後に国家主義運動の中心人物となる宮崎正義と共に学ぶことになります。1914年には南満洲鉄道株式会社の社費留学生としてモスクワの大学に入学し、さらに1916年にはペテルブルク大学に移り、哲学やロシア史を学びました。

嶋野は1917年のロシア2月革命を目撃し、7月に帰国しましたが、この経験は彼のその後の研究や活動に多大な影響を与えました。その年、南満洲鉄道に入社し、東京支社の東亜経済調査局に所属しました。

辞典の編纂と国家主義運動

嶋野はロシア滞在中に準備を進めていた『露和辞典』の編纂に取り組み、1928年に出版に成功しました。この辞典は、ロシア語学習者にとって重要な資源となりました。また、彼は南満洲鉄道の同僚であった大川周明とともに国家主義運動に参加し、老壮会や猶存社、行地社などの組織にも関与しました。特に、猶存社での北一輝との親交は、彼にとって重要なものでありました。

幅広い翻訳活動と思想への貢献

嶋野は「ユーラシア主義者」と称されるロシアの文学者や哲学者たちの著作をいくつも翻訳しました。これにより、彼はロシア文学や思想を日本に広める架け橋となりました。また、在日イスラム教徒の活動を支援し、彼らの声を社会に届ける役割も果たしました。

1940年には華北交通会社に転職し、戦後には東京ニコライ学院、自衛隊調査学校、関東管区警察学校の講師として教育者としても活動しました。彼の知識と経験は多くの学生たちに受け継がれ、影響を与えました。

主要な著作

嶋野は多彩な著作を残しました。その主な著作には、次のようなものがあります：

• - 『黒龍江航運ニ関スル調査』
• - 『露和辞典』
• - 『社会理想の法理学的研究』
• - 『ソ連最近の情勢』
• - 『共産主義と我等の世界観』

これらの著作は、彼の広範な知識と深い考察を反映しており、彼の学者としての地位を確立する上で重要な役割を果たしました。特に彼の翻訳作業は、日本のロシア研究において重要な意義を持つものです。

人生の終焉と影響

嶋野三郎は1982年に世を去りましたが、彼の遺産は今なお日本のロシア研究に生き続けています。彼の著作や翻訳は、ロシア文学や思想を学ぶ人々にとって貴重な資源となり、国際的な文化交流にも寄与しています。また、彼の思想や活動は、現在の日本におけるロシアの理解にも影響を与え続けています。嶋野の墓所は高尾霊園にあり、彼の生涯と業績は今でも語り継がれています。

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