猶存社

猶存社/猶存会の歴史と成り立ち

猶存社とその関連団体である猶存会は、1919年8月1日に設立されました。この組織は、国家主義を基にした社会主義の理念を掲げ、天皇制のもとにおける国家改造を目的としていました。初代の指導者たちには、大川周明や満川亀太郎などが名を連ね、彼らはいずれも過激な国家主義思想を持っていました。猶存社は急進的国家主義団体「老壮会」から派生したものであり、その名称は陶淵明の詩にちなんでいます。

1. 前史

猶存社の基盤を築いた大川や満川は、1918年秋に設立された老壮会のメンバーでした。この団体は、左右の思想を包摂し、さまざまな社会運動家が参加していました。その中には、堺利彦のような左翼思想家や、高畠素之といった国家社会主義者、さらには大川と満川のような反共・大アジア主義者が含まれていました。猶存社は、こうした多様な意見の中から、右翼的な革新を求める団体として誕生しました。その背景には、1917年のロシア革命や、国内の米騒動といった社会的変動がありました。

設立当初、猶存社は北一輝を迎え入れました。彼は国から帰国した際、猶存社の活動の拠点にすべく呼び寄せられたのです。北が参加すると、彼の著作である『国家改造案原理大綱』が当団体の行動基準となり、「日本帝国の改造とアジア民族の解放」といったスローガンを掲げることとなりました。この流れに沿って、猶存社は本格的な国家改造運動を推進しました。

2. 北の参画と活動の展開

北が参加した後、猶存社は「革命日本の建設」や「道義的対外政策の遂行」などを綱領として明確に掲げ、1920年9月には機関誌『雄叫』を発行しました。彼らは、皇太子裕仁親王の欧州訪問を阻止するなどの政治活動を行い、また安田善次郎や原敬といった著名人の暗殺事件にも影響を与えたと言われています。

更に、猶存社のメンバーはさまざまな学生団体を結成し、これにより主に大学キャンパスでの活動が盛んとなりました。具体的には東京帝国大学の「日の会」や京都帝国大学の「猶興学会」など、多くの組織が猶存社の影響を受けて生まれました。

3. 解散とその後の動き

しかし、1933年には大川と北の間に意見の対立が生じ、それに伴い猶存社は解散に至りました。その後、大川は満川や安岡正篤らと共に新たな団体「行地社」を結成する一方で、北の影響を受けた清水行之助は「大化会」や「大行社」を創設しました。

4. 結論

猶存社の活動は、当時の日本における国家改造運動や右翼団体の形成に大きな影響を与えました。その後も日本の右派思想において重要な役割を果たし、その痕跡は現在にも見受けられます。猶存社の理念は、時代を越えて引き継がれているとも言え、国民の思想に多様性をもたらす要素の一つとなりました。

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