嶺南丸事件

嶺南丸事件

嶺南丸事件は1944年12月24日に発生した悲劇的な事故で、当時日本に占領されていた香港で、内河運営組合に所属する汽船「嶺南丸」がアメリカ軍の空襲を受けて沈没し、349名が犠牲となりました。この事件は、戦争の影響を直接受けた人々の生活を思い起こさせる重要な出来事です。

事件の経過

事件が起きた日、午前11時に嶺南丸は香港を出港しました。当時、468人が乗船しており、その大多数が中国人でした。同時に他の船も航行しており、特にうち1隻の新東安は2艘の木製ポンツーンを曳航していました。新東安号は、嶺南丸の進行方向の前方10メートルほどを航行していました。嶺南丸は香港の西側にある龍鼓水道を進行中でした。

ところが、突然、アメリカ軍の戦闘機が空から現れました。彼らは急降下しながら船艇に向けて機銃掃射を実施。これにより、船上の数多くの乗客が命を奪われ、混乱に陥った乗客たちは一等客室や二等客室から三等客室に逃げ込もうとしました。しかし、続いて投下された爆弾によって船が傾き、最初の爆発の直後には第二弾が投下され、嶺南丸は大破。その後、船は沈没してしまいました。

生き残った乗客の中には、すぐに海に飛び込んだ者もいましたが、泳げない者は流れ着いた家具にしがみつくことしかできず、救命ボートを使用して逃れた人はごくわずかでした。沈没後、海上にはわずかに船の煙突が水面から顔を出すのみとなり、多くの心の奥に悲しみを残しました。

一方、隣を航行していた新東安号も攻撃を受け、船長が被弾して死亡するという事態が発生しました。しかし、幸いにも新東安号は沈没することは免れ、残った乗員は深水埗に向かって助けを求めることができました。

救援活動

嶺南丸が沈没したという知らせを受けて、深水埗の警察当局はただちに救援のための船を出動させました。また、他の帆船も捜索と救助に協力し、総計で121名が救出されました。救出された24名の中には負傷者もおり、20名の男性と4名の女性が九龍の広華医院に搬送されましたが、残念ながらそのうちの1名は重傷のために命を落としました。

事件の結果、347名の人々がそのまま海に沈み、最終的には349人が犠牲となりました。亡くなった人々の中には、香港華民の代表である陳廉伯さんも含まれていましたが、彼の妻と子供1人は無事でした。この事件は、戦争の厳しい影響が民間人にどのように及ぶかを示す重要な歴史的事例として、今も語り継がれています。

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