嶺山時善

文久2年（1862年）9月13日、現在の暦でいう11月4日に、嶺山時善はこの世に生を受けました。激動の明治時代、そして大正を経て昭和初期に至るまで、日本の近代化が進む中で政治家として活動した人物です。鹿児島県に生まれ育ち、地元の鹿児島師範学校で学んだ彼は、やがて日本の近代化が進む中で政治の道を志すことになります。彼の経歴は、複数の選挙に挑戦し、当選と落選、そして所属政党を変えながら議席を目指した軌跡として知られています。

初めて衆議院議員の議席を目指したのは、明治35年（1902年）に実施された第7回衆議院議員総選挙のことでした。日本の近代議会政治が始まって間もないこの時期、彼は自身の政治的な信念を胸に、故郷である鹿児島県の大島選挙区から無所属の立場でこの選挙に臨みました。当時の選挙制度は現在とは異なり、様々な課題を抱えていましたが、嶺山は果敢に挑戦しました。しかし、残念ながらこの選挙では、有権者の支持を十分に集めることができず、当選には至りませんでした。

しかし、一度の挫折で彼の政治家への道を閉ざすことはありませんでした。わずか一年後の明治36年（1903年）には、早くも第8回衆議院議員総選挙が実施されます。嶺山時善は、この選挙に再び挑戦することを決意し、今回は有力政党の一つであった政友倶楽部の公認候補として立候補しました。所属政党を得たことで、より組織的な選挙活動が可能となったのかもしれません。有権者の信任を得た彼は、この選挙で見事に初当選を果たし、念願であった衆議院議員の議席を獲得しました。ここに、彼の国政の場での活動が始まったのです。

衆議院議員として活動を開始した嶺山は、翌明治37年（1904年）に行われた第9回衆議院議員総選挙にも連続して出馬しました。この時、彼は前回とは異なり、再び無所属という立場で選挙に臨んでいます。所属政党を持たない形での選挙戦は、組織力に頼れない厳しい戦いとなったと推測されます。しかし、初当選からわずか一年という短い期間にもかかわらず、彼は再び有権者の支持を得ることに成功し、見事に連続当選を果たしました。これにより、嶺山時善は衆議院議員として2期目を務めることになったのです。

2期目の任期を終え、政治家としての経験を積んだ嶺山は、明治41年（1908年）に実施された第10回衆議院議員総選挙に三度目の挑戦をしました。この選挙では、彼は大同倶楽部の候補として立候補しています。所属政党を再び変えての挑戦となりましたが、残念ながらこの選挙では議席を獲得することができませんでした。これが、嶺山時善が衆議院議員を目指して立候補した最後の選挙となりました。

第10回総選挙での落選を最後に、嶺山時善が再び国政の舞台に立つことはありませんでした。彼はその後、昭和5年（1930年）10月28日にその生涯を終えました。短期間に複数の選挙を経験し、当選と落選、そして所属政党の変遷を経て衆議院議員を2期務めた嶺山時善は、近代日本の議会政治の一角を担った人物として、その名を歴史に刻んでいます。

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