巖谷小波

巖谷 小波について

巖谷小波（いわや さざなみ、1870年7月4日 - 1933年9月5日）は、明治から大正期に活躍した著名な作家、児童文学者、口演童話家であり、俳人でもありました。本名は季雄（すえお）で、漣山人、楽天居、大江小波といった別号でも知られています。日本で初の創作童話として名を馳せた作品『こがね丸』（1891年）は、近代日本の児童文学の幕を開けた作品として評価されています。

人物像

小波は児童文学に特有の「お伽噺」という言葉を用い、彼自身が編集長を務めた雑誌「少年世界」「少女世界」「幼年世界」などを通じて、日本中に児童文学を広めました。また、個人による日本初の児童叢書『日本昔噺』や『世界お伽噺』など、多くのシリーズ作を刊行し、世界中の民間伝承をリテリングしました。小波の手によって再生された『桃太郎』や『金太郎』などの民話は、幼い読者たちに深い愛情を持って受け入れられました。

幼少期から彼は文学に対する強い情熱を持ち、平河小学校の在学中には文学に目覚め、時には周囲の反対を押し切ってまで文学の道を選びました。後の彼を支えたのは、兄から贈られたドイツの昔話集でした。やがて文学結社硯友社に参加し、尾崎紅葉とともに小説の執筆を開始しました。彼の作品は感傷的な内容が多く、少年少女の心に寄り添うものでした。

児童文学者への転身

1891年に『こがね丸』を出版したことで、彼の児童文学者としてのキャリアはスタートします。この作品は爆発的な人気を博し、その後も様々な児童向け雑誌や叢書を通じて彼は作品を発表し続けました。特に彼の編集した「少年世界」は、日本の児童文学において重要な役割を果たしました。彼の手によるお伽噺の数々は、日本の近代児童文学の発展において無視できない重要性を持っていました。

お伽噺の創造にあたるだけでなく、小波は口演童話や児童劇の普及にも尽力しました。各地での口演活動を通じて、彼は全国のこどもたちに物語の世界を届け続けました。さらに、自伝『我が五十年』や、息子の文芸評論家巖谷大四が著した伝記を通じて、その生涯を知ることができます。

歌詞の著作や教育への影響

巖谷小波は文部省唱歌の作詞も手掛けており、『ふじの山』や『一寸法師』など、多くの校歌作りでも知られています。彼の活動は、文学の枠を超えて教育現場にまで影響を及ぼしました。また、'木曜会'という文芸サロンを主催し、多くの作家たちと創作した作品を互いに批評し合い、研鑽を重ねる場を提供しました。

最後の時

1933年、巖谷小波は直腸癌のために64年の生涯を閉じました。彼の辞世の句には、彼が求めた安らぎが込められていました。彼が作り上げた作品群は、今なお多くの人々に愛され続けています。小波は日本児童文学の基盤を築き、数多くの児童文学者たちに影響を与えた偉大な作家として、後世に語り継がれています。

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