川内八幡宮例大祭

川内八幡宮例大祭（川内祭り）

川内八幡宮例大祭は、青森県むつ市川内町にある川内八幡宮の例大祭で、地元では「川内祭り」とも呼ばれています。この祭りは青森県の無形民俗文化財に指定されており、その歴史は古く、むつ・下北地区における山車祭りの先駆けの一つとされています。特に、高さ5メートルを超える巨大な木造山車は、その規模において青森県内でも最大級を誇ります。

歴史と背景

川内八幡宮例大祭への山車参加は、むつ・下北地区において、田名部神社例大祭、箭根森八幡宮例大祭に次ぐ歴史を持つとされ、遅くとも1711年には山車が祭りに参加していた記録があります。江戸時代初期、北前船の交流を通じて、様々な地域の人々が下北地方に訪れ、言葉や文化を伝えました。西廻り航路を通じて、北海道南部や津軽、出羽、北陸、さらには瀬戸内海や大阪湾沿岸など、日本海沿岸の各地から祇園祭系の祭りや囃子が伝わり、山車の形態や囃子にその影響が見られます。また、東廻り航路を通じた交流も無視できません。

昼の山車は京都祇園祭の影響を受けた豪華な装飾が特徴で、京都や長崎に装飾が発注され、中には中国やペルシャなどの外国の材料や技術が用いられたものもあります。一方、夜の山車は、見返り絵をはじめとするねぶたの影響を受けた装飾が施され、地元の人々によって制作されています。

山車本体や調度品は高価であり、運行や維持には多額の費用が必要です。むつ・下北地区の経済中心地であった田名部よりも川内の山車が大きかったのか、一時的に経済力が向上した大正時代に対抗意識から大きく改修されたのかは定かではありませんが、この大きな山車が、後述する「喧嘩祭り」へと繋がる一因となっています。

祭りはかつて旧暦8月14-15日に行われていましたが、明治44年（1911年）以降に新暦9月14-15日となり、現在では敬老の日の前々日と前日に開催されています。

神楽と山車

祭りの行列は、猿田彦、谷地町大神楽、稚児行列、八幡宮神輿、周辺集落の神楽、そして中心街各町の山車5台で構成されます。山車の順番は時代によって変遷がありますが、全体運行上合理的な順序となっています。山車はかつて屋台やヤマと呼ばれていましたが、1970年代以降はヤマと呼ばれるのが一般的です。形状は祇園祭の鉾を除いた屋根付きの2階建て山車で、1階には囃子手が乗り、2階には御神体が安置されます。車輪は木製で鉄輪が被せられており、梶棒と呼ばれる棒を使って方向転換を行います。

昼の山車は、日章旗や水引幕などで飾られ、豪華絢爛な雰囲気を醸し出します。夜間は、絵灯籠である額に付け替えられ、内部から照らされることで幻想的な光景が広がります。山車の運行は各町内会の若者頭と大当番が取り仕切り、囃子方は主に小中学生の男子が担当します。

囃子とかけ声

囃子は横笛、鼓、摺鉦、大太鼓、小太鼓で演奏され、主に「囃子（本囃子、祇園囃子）」、「イヨイヤサッサ」、「川越え（ヤンマヤーレ）」の三種類があります。「イヨイヤサッサ」は、ご祝儀や辻回しの際に行われ、祭りの象徴的な囃子として知られています。「川越え（ヤンマヤーレ）」は、川内川を渡る際に演奏されていたもので、ゆったりとしたリズムが特徴です。

主な行事日程

祭りは、宵宮と本祭の二日間で行われます。

宵宮：各町内を山車が運行し、夕方には八幡様に集合して点灯式が行われます。
本祭：八幡様での祈祷後、合同運行が開始され、町内を巡行します。夕方から夜にかけては、川越えが行われ、八幡様へと帰還します。

クライマックスと喧嘩祭り

祭りのクライマックスは、仲崎に渡る際の川越えと、その直後の「イヨイヤサッサ」です。川面に映る山車と花火の競演は、息をのむ美しさです。観光化される前は、山車同士がぶつかり合う「喧嘩祭り」として知られていましたが、現在は安全に配慮したパフォーマンスが行われています。特に、浦町の県信用組合前で行われる「喧嘩祭り」風のパフォーマンスは、祭りの最大の盛り上がりを見せます。

帰還時には、浜町と仲崎などが二車別れ（向かい合っての「イヨイヤサッサ」後、各町へ帰還）を行うこともあります。

喧嘩祭りに関わる歴史事情と運行での考慮

川内八幡宮例大祭の「喧嘩祭り」は、山車同士がぶつかり合って競うものではなく、不注意などによる接触が喧嘩に発展したのが起源です。山車の順番は固定されており、運行中に競い合うことはありません。観光化後に横並びになるパフォーマンスが行われるようになりました。過去には、山車同士の接触が原因で喧嘩が発生し、祭礼後も長く禍根を残したこともありました。

現在では、安全に運行できるよう、様々な対策が講じられています。

運行地域

祭りは、むつ市川内町の中心街で行われます。

川内八幡宮例大祭は、歴史と伝統を受け継ぎながら、地域の人々の熱意によって支えられている、貴重な文化遺産です。

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