川島郷歌

川島郷歌

「川島郷歌」（かわじまごうか）は、埼玉県比企郡川島町に伝わる地域に根ざした唱歌です。作詞は佐佐木信綱、作曲は東京音楽学校の名義で知られる田村虎蔵によるものです。

歴史的背景

川島郷歌は、1910年8月に発生した大水害からの復興を願って作られました。この災害は東日本の広範囲に影響を及ぼしましたが、川島町を含む比企郡の6村（中山村、伊草村、三保谷村、出丸村、八ツ保村、小見野村）は連携して復興に取り組みました。この際に、地域住民が一緒に参加する大運動会が10月に三保谷尋常小学校で開催されました。

運動会の成功を受けて、参加した村の人々が一つになれる歌の作成が提案されました。当初、男爵の千家尊福に作詞が依頼されましたが、作曲が困難を極めたため、最終的に佐佐木信綱に歌詞を依頼し、田村虎蔵が編曲を担当しました。こうして完成した楽曲は、地域の団結を象徴するものとして、川島町の人々に受け入れられました。

1954年には6村が合併して川島町が誕生し、この曲は町の歌としての地位を確立しました。現行の市町村歌の中では最も古い楽曲とされていますが、公的な行事で謳われることは少なく、地域の盆踊りや鼓笛などで主に演奏されています。

歌詞と著作権

川島郷歌の歌詞と旋律は、著作権の保護期間が終了し、現在はパブリックドメインとなっています。これにより、誰でも自由に歌い継ぐことができる状態です。

歌詞の改訂

戦後の合併に伴い、2番の歌詞が一部改訂されました。具体的には、「花のみのりも」が「花のかおりも」に、「御代の恵みの」が「天の恵みの」に変更されました。この改訂は、地域の変化を反映したものと考えられています。

音源の記録

この歌の音源は、1972年に利根川昭子（川島町立川島中学校教諭）の指揮によるレコード盤が作成され、川島中学校の生徒たちの斉唱が収録されました。また、1992年には寺岡等（埼玉県警察音楽隊長）が指揮を担当したCDが町により自主制作され、川島中学校生徒の斉唱や埼玉県警察音楽隊による演奏が収められています。

参考文献

この郷歌の歴史や背景については、川島町役場発行の『川島町教育史』や埼玉県県民文化課の『さいたまの民謡 ふるさとに歌い継がれる唄』などで詳しく紹介されています。

関連項目

また、川島郷歌と同様に県内で現行最古の自治体歌とされている「郷土唱歌（上峰町）」についても興味深い点があります。川島郷歌は、地域が共有する心をメロディーにし、今もなお人々に愛され続けています。誇り高き地域の歴史を感じさせるこの唱歌は、今後も歌い継がれていくことでしょう。

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