川田甕江

川田甕江について

川田甕江（かわだ おうこう、1830年8月1日 - 1896年2月2日）は、幕末から明治期に活躍した漢学者であり、本名は剛（たけし）です。彼は、幼少期に両親を失い、困難な状況に置かれながらも学問の道を歩みました。若い頃には地元の儒学者、鎌田玄渓のもとで学ぶ中で、自身の才能を見出され、江戸での遊学を勧められます。

江戸では、佐藤一斎ら一流の学者たちの下で学び、学資を得るために家庭教師を務めたり、自らの蔵書を売ったりして苦学を続けました。その結果、近江大溝藩の藩儒としての地位を得ますが、備中松山藩の学者、山田方谷からの誘いを受け、そちらへ仕官することを決意しました。

甕江は山田方谷のもとで学び、すぐに頭角を現しました。しかし、戊辰戦争では、備中松山藩が朝敵とされ、藩の存続が危ぶまれる事態に直面します。彼は藩兵の撤退を企画しつつ、岡山藩に占領されるという複雑な状況の中で、さらなる苦境に立たされました。

修史館時代の対立

藩が存続することが決まると、甕江は江戸に上り、塾を開くとともに薩摩藩の重野安繹とともに江戸漢学界の重鎮となります。彼らは「明治の三大文宗」と称され、国史編纂事業にも深く関与しました。特に、太政官の大学小博士として、その責任を担うこととなりました。

しかし、重野との意見対立が始まりました。国史編纂の進め方や、史料の取り扱いについての見解が異なっていたのです。重野は、新しい国史を創るべきだと考えたのに対して、甕江は史料の収集を重視すべきだと主張しました。特に『太平記』の扱いを巡る論争が深刻化し、二人は激しい論戦を繰り広げ、支持者たちを二分する結果となりました。

明治14年（1881年）には、甕江は修史館を去り、宮内省へ移行します。この論争は史学界においても大きな影響を与え、甕江は歴史学を「名教道徳」に従属させようとしたとの誤解が生まれることになりました。実際には、彼は重野の独善的手法に反発し、より慎重な史料批判が必要と考えていたのです。

晩年とその影響

1896年に亡くなるまで、甕江は東京帝国大学の教授や華族女学院の校長を歴任し，その学問的な業績を次世代に継承していきました。また、彼は故・板倉勝静を訪れ、相談相手としても支え合った関係を保っていました。彼の家族もそれぞれ学問や実業に従事し、彼の影響を受け続けています。

甕江の功績は、その後の日本の歴史学や教育界に多大な影響を与えたと言えます。特に史料批判の重要性を唱え、後世の研究者たちに多くの示唆を与えました。彼の墓所は文京区の吉祥寺にあり、今日でも彼の業績と影響力は認識されています。

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