佐藤一斎

佐藤一斎

佐藤一斎（さとう いっさい）は、江戸時代後期の儒学者であり、その学識と人格で多くの門下生を育てました。美濃国岩村藩出身で、名は坦（たいら）、通称は捨蔵、字は大道、号は一斎の他に愛日楼、老吾軒などがあります。1772年に生まれ、1859年に88歳で没しました。

生涯

一斎は、岩村藩の家老を務める家柄の次男として生まれました。若い頃は藩に仕えましたが、後に大坂で皆川淇園や中井竹山に儒学を学びました。江戸に戻ってからは林簡順に師事し、簡順の死後、林述斎の門下となり、その塾長として多くの門弟の指導にあたりました。

1841年には、述斎の死後、昌平黌の儒官（総長）に任じられ、官学の総帥として重きをなしました。朱子学を専門としながらも、陽明学も修め、その学識の深さから「陽朱陰王」と称されました。一斎の門下からは、山田方谷、佐久間象山、渡辺崋山、横井小楠など、幕末に活躍した多くの人材が輩出されています。

一斎は、時間厳守を第一とする厳格な性格の持ち主でしたが、一方で「蛮社の獄」では、渡辺崋山を擁護する毅然とした態度を取らなかったため、後世に批判されることもありました。

また、安政元年（1854年）の日米和親条約締結交渉では、大学頭の林復斎（述斎の六男）を補佐しました。しかし、吉田松陰は、一斎が西洋の事柄を嫌っていることに失望しています。

人物

一斎は、常に時計を持ち、時間を厳守する人物として知られています。その一方で、学問に対しては非常に熱心であり、多くの門弟を育成しました。彼の教えは、朱子学を基本としつつも、陽明学の要素も取り入れられており、その柔軟な思想が、多くの人々を魅了しました。

家族

一斎には、多くの子供がおり、その中には、田口卯吉、木村鐙子、吉田茂など、歴史に名を残す人物もいます。また、娘の一人は、一斎の門下であった河田迪斎の後妻となっています。

著書

一斎の代表的な著書としては、『言志四録』が挙げられます。これは、『言志録』『言志後録』『言志晩録』『言志耋録』の四部からなる随想録で、幕末の武士たちに広く読まれました。特に西郷隆盛は、この書を終生の愛読書としたことで知られています。

また、『重職心得箇条』は、重役としての心構えを聖徳太子の十七条憲法に擬して書き記したものです。

影響

佐藤一斎は、その学識と人格を通じて、幕末の思想界に大きな影響を与えました。彼の門下からは、多くの英才が輩出し、その教えは、現代においても、多くの人々に読み継がれています。

一斎の思想は、朱子学を基盤としながらも、陽明学を取り入れた柔軟なものでした。また、彼の著書『言志四録』は、その思想のエッセンスを伝えるものとして、多くの人々に愛読されています。特に、「三学戒」は、自己を律する言葉として、今日でも多くの人に知られています。

参考文献

• - 『言志四録（一）言志録』川上正光全訳注、講談社
• - 『言志四録（二）言志後録』川上正光全訳注、講談社
• - 『言志四録（三）言志晩録』川上正光全訳注、講談社
• - 『言志四録（四）言志耋録』川上正光全訳注、講談社
• - 西郷隆盛『西郷南洲遺訓　附 手抄言志録及遺文』山田済斎編、岩波書店
• - 高瀬代次郎『佐藤一斎と其の門人』南陽堂本店
• - 安井小太郎『日本儒学史』富山房
• - 岐阜県教育会『郷土の偉人 上,「佐藤一斎」』岐阜県教育会
• - 『佐藤一斎全集』全14巻、明徳出版社
• - 『佐藤一斎　言志四録』 山田準・五弓安二郎 訳註（岩波文庫）
• - 『座右版 言志四録』 久須本文雄全訳注（講談社）
• - 『日本思想大系46　佐藤一斎　大塩中斎』（岩波書店）

外部リンク

• - 言志録・言志後録・言志晩録・言志耋録 / 佐藤一斎
• - 佐藤一斎：作家別作品リスト - [青空文庫]]
• - [誠之館人物誌 「佐藤一斎」 - 儒家

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