川連漆器

川連漆器（かわつらしっき）

川連漆器は、秋田県湯沢市川連地区を中心に生産されている伝統的な漆器です。その歴史は古く、鎌倉時代にまで遡ります。普段使いできる丈夫さと、美しい加飾が特徴で、長年にわたり人々に愛されてきました。

歴史

川連漆器の起源は、鎌倉時代の1193年頃に遡ります。源頼朝の家臣であり、稲庭城主であった小野寺重道の弟、道矩公が、家臣に武具（鞘、弓、鎧など）に漆を塗らせたのが始まりとされています。

本格的な漆器産業としての発展は、17世紀中頃の元和（1615年）から元禄時代にかけてのことです。川連村を中心に約26戸の椀師が椀の製作を始めたと伝えられています。文化12年（1815年）には、藩の許可を得て朱塗りの漆器を製造し、他国への販路を拡大しました。江戸時代後期には、藩の保護政策のもとで椀、膳、重箱など、多様な漆器が作られるようになり、沈金や蒔絵といった装飾が加えられ、産業基盤はさらに拡大しました。

明治時代に入ると、1896年（明治29年）に川連村漆器同業組合が発足し、品質の維持・向上や販路拡大に努めました。近年では、新製品の開発や販路の拡大を通じて、様々な企業との連携が進み、全国展開も見られるようになっています。

1976年（昭和51年）には、国の伝統的工芸品に認定され、1996年（平成8年）には秋田県の伝統工芸品にも選ばれました。また、地域団体商標にも登録されています。

特徴

川連漆器の特徴は、堅牢さと実用性にあります。地塗りと中塗りを何度も繰り返した後、「花塗り」と呼ばれる方法で仕上げられます。この花塗りによって、漆器の表面は滑らかで美しい光沢を帯びます。丈夫で使いやすく、比較的安価であるため、普段使いの実用漆器として広く利用されています。

加飾には、川連漆器独特の技法である沈金や蒔絵が用いられます。沈金は、漆の表面に刃物で模様を彫り、その溝に金箔や金粉を埋め込む技法です。蒔絵は、漆で模様を描き、その上に金粉や銀粉を蒔きつけて装飾する技法です。これらの技法によって、川連漆器は優美で格調高い雰囲気を醸し出しています。

主な製品

椀
膳
重箱
茶托
盆
花器
香合

これらの製品は、伝統的なデザインに加え、現代のライフスタイルに合わせた新しいデザインのものも作られています。

脚注

参考文献
酒井宣昭『川連漆器産地と遠刈田系こけし産地の流通構造の比較-アンケート調査・聞き取り調査の結果を中心として』1992年、東北地理学会、2001年秋季大会記事、p7

関連項目

漆器
漆工
秋田県

外部リンク

* 湯沢市川連漆器伝統工芸館

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