巣守三位

巣守三位：源氏物語に秘められた謎の女性

源氏物語の登場人物として知られる巣守三位。54帖からなる一般的な源氏物語本文には登場しませんが、様々な古系図や系譜などにその存在が記されており、かつては独立した巻として存在したと考えられる「巣守」巻に詳細が記されていたと推測されています。琵琶の名手として知られ、匂宮と薫という二人の男性から求愛されたという、複雑な恋愛模様も注目すべき点です。

複数の古系図が描く、不確かな像

巣守三位に関する記述は、正嘉本古系図、鶴見大学本古系図、国文研本古系図など多くの古系図に見られます。しかし、それらの記述は完全に一致するわけではなく、呼称も「巣守三位」「すもり」「一品内親王三位」など様々です。この食い違いは、元の「巣守」巻に複数の異本が存在したか、あるいは古系図作成時の誤記によるものと考えられています。どの説が正しいのか、現時点では断定できません。

系譜と家族：琵琶の名家

巣守三位は、光源氏の弟である蛍兵部卿宮の孫にあたります。父は「侍従」または「源三位」と呼ばれ、母は鶴見大学本古系図によると前斎宮の子とされています。家系は琵琶の名手が多く、巣守三位自身もその才能で知られていました。妹は「巣守の中君」「中君」「宣旨」など、様々な呼び名で呼ばれており、兄弟には「頭中将」と呼ばれる人物がいます。兄弟姉妹の年齢関係は資料によって異なり、はっきりとはしていません。

匂宮と薫、そして出家：複雑な恋愛

妹が今上帝の女一宮に仕えていた頃、匂宮は妹に接近していました。その後、巣守三位も女一宮に仕えるようになり、琵琶の師として三位に叙せられます。匂宮は妹から姉へと関心を移し、姉の巣守三位にも通うようになります。しかし、巣守三位は匂宮を嫌い、薫との仲を深め、男の子をもうけます。それでもなお匂宮が通ってくることに煩わしさを感じた巣守三位は、出家し大内山に隠棲していた朱雀院の女四宮の元へ赴き、自身も出家したと伝えられています。

謎多き人物像

このように、巣守三位の生涯は、複数の古系図の記述を総合的に検討しても、依然として多くの謎が残されています。彼女の正確な年齢、妹との関係、そして出家の真意など、断定できる情報は少ないのが現状です。しかし、これらの断片的な情報から、彼女が当時の宮廷社会の中で複雑な立場にあり、激しく揺れ動く心情を抱えていた女性であったことが想像できます。その生涯は、源氏物語の世界観をより深く理解する上で、重要な一端を担っていると言えるでしょう。今後の研究で、より多くの事実が解明されることを期待したいです。

参考文献

※ 具体的な参考文献は、この文章を作成するにあたり参照した複数の源氏物語関連の古系図、研究論文などを含みますが、個々の文献の特定および詳細な記述は割愛させていただきます。

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