工事契約に関する会計基準

工事契約に関する会計基準（企業会計基準第15号）の概要

工事契約に関連する会計基準である企業会計基準第15号は、財団法人企業会計基準委員会（ASBJ）によって発表されました。この基準は、工事施工者が工事契約に基づいて収益や原価をどう認識するかを定めています。2021年4月以降、工事施工者は工事の進行中でも工事進行基準を基本として適用することが義務付けられています。この基準は、国際会計基準（IAS）第11号に対応した内容となっています。

制度の概要

工事契約に関して、この会計基準の大きなポイントは、工事の進捗が認められる場合、工事の途中でも収益を認識できる点です。工事進行基準では、工事が完了する前でも、進捗に基づいた収益計上が求められます。これにより、発注者からの請求が行われる前でも、実際に進んだ分の収益を計上することが可能になります。

この会計基準が適用されるのは、顧客の指示に従い、基本的な仕様や作業内容をもとに行われる請負工事です。具体的には、ソフトウェア開発のプロジェクトが含まれますが、工事設計や単なる労働提供の契約は対象外となります。

工事進行基準の適用を受ける工事契約では、決算日には工事の進捗に応じた収益と原価が計上されます。また、未収債権（売掛金）として記載された工事収益に関連する金銭債権は、貸倒引当金の設定対象となります。

工事の原価が収益を上回る場合、つまり赤字が見込まれる場合には、工事損失引当金を計上する必要があります。

重要性の判定

本基準では原則として工事進行基準が強制適用されますが、工期が特に短い工事については、従来通り工事完成基準を適用することも認められています。

税法との関係

法人税法では、一定の規模以上の工事契約に対して工事進行基準の適用が求められてきました。これにより、会計上と税法上で収益認識に差異が生じていました。しかし、今回の会計基準の施行以降、収益は工事の進捗に基づいて計上されるようになり、収益に関する認識における調整が図られ、税法との整合性が向上しました。

注記の取り扱い

工事契約に関しては、いくつかの重要な項目が注記として求められます。たとえば、工事契約の認識基準や、決算日における工事の進捗度を見積もる方法などが含まれます。ただし、当期の工事損失引当金繰入額に関する注記は重要性が低いと判断される場合には省略が認められることがあります。

連結決算上の会計処理

本会計基準は主に工事施工者の視点に基づいていますが、発注者側では工事の完成までその費用と債務の認識を行わないため、グループ会社において親会社が発注者として子会社に請負工事を発注する場合、工事進行に関連した債権債務の消去が必ずしも一致しないことがあります。

これにより、グループ間で工事契約を行う場合には、連結決算での正確な処理手順を事前に決めておく必要があります。これらの新たな基準に基づいた会計処理は、企業が適切に収益を認識するための重要なフレームワークとなります。

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