工学院大学建築学部

工学院大学 建築学部

工学院大学建築学部（英称：School of architecture）は、東京都にキャンパスを構える工学院大学が設置する教育機関です。この学部は、2011年4月に工学部から建築学科と建築都市デザイン学科が発展的に独立・改組される形で誕生しました。同時期に設置された近畿大学建築学部と並び、日本国内で学部単体として建築学を専門とする学部が設立された初めての事例の一つとして知られています。

設立の経緯と背景

工学院大学において建築学部を設置する構想は、その誕生の約10年前にまで遡ります。2002年には、建築学科内で将来構想を検討するワーキンググループが発足。その後、大学全体の複数学部化を目指す「21世紀プラン」が策定される中で、建築系学部は有力な候補の一つとして位置づけられました。しかし、2006年に一度行われた複数学部化の際には、情報学部やグローバルエンジニアリング学部の設立が優先され、建築学部の設置は見送られることとなります。

それでも学部化への機運は衰えず、再び検討が進められました。設立の背景には、社会経済の成熟化により従来の「新築中心」であった建築市場が変化・縮小している現状がありました。20世紀型の建築学教育体系では、多様化・複雑化する近未来の市場ニーズに対応できる人材の育成が困難であるという課題認識が生まれます。このミスマッチを解消し、既存の工学部建築系の専門領域を大幅に拡張する必要性が認識されました。

工学的なアプローチだけでは対応しきれない現代建築のニーズに応えるため、単なる工学部建築学科ではなく、より総合的な「建築学」を扱う学部として位置づけることが重要視されました。建築関連分野には、必ずしも高度な工学的教育を必須としない領域も存在し、これらの分野で卒業生が競争優位に立てる教育コンテンツを提供する必要がありました。また、従来の工学部という枠組みに気後れしていた、建築を多角的に学びたいと考える潜在的な志願者層を取り込むことも目標とされました。

学部構成と教育内容

工学院大学建築学部は、まちづくり学科、建築学科、建築デザイン学科の3つの学科で構成されています。学生は大学1・2年次にはこれら3学科共通のカリキュラムを履修し、建築学の幅広い基礎知識を修得します。3・4年次には自身の興味や目標に応じた12分野の中から専門分野を選択し、より深い専門知識・技術を身につけていきます。

本学部の大きな特色の一つは、従来の工学分野に加え、美学、社会学、心理学、法学、歴史学、地理学、福祉学といった多様な人文・社会科学分野を積極的に教育に取り入れている点です。これにより、建築を単なる構造物としてだけでなく、人間や社会との関わりの中で多角的に捉える視点を養います。また、建築の供給者だけでなく、実際に建物を使う「ユーザー」の視点を重視した教育も行われています。

卒業後に幅広い「建築職能人」（関連諸学・技術の統合者）として活躍できる人材を育成することを目標としており、多様な職能領域に対応した専門教育体系が提供されています。一級建築士の資格取得についても重点が置かれており、受験資格の認定に必要な科目が1・2年次の段階からカリキュラムに組み込まれ、学生がスムーズに資格取得を目指せるよう配慮されています。

入試制度と多様な学生像

工学院大学建築学部は、従来の工学部志願者層を拡張するため、多様なバックグラウンドを持つ受験者を受け入れる体制を整えています。理系入試、文理系入試、社会工学系入試、文系入試の4つの入試方式を導入しており、特に文系からの受験者にも門戸を開いています。文系入試などで入学した学生に対しては、基礎教育科目やリメディアル教育を充実させるなど、個々の学生の状況に合わせたきめ細やかな教育プログラムを提供しています。

設立初年度には、建築学部の受験者数が前年から大幅に増加し、さらに他の学部の受験者数増加にもつながるなど、大学全体に良い波及効果をもたらしました。これは、建築のハードからソフトまで幅広く学べるという本学部の特色が、多くの受験生に魅力的に映った結果と言えます。

沿革（主要な出来事）

1887年：工手学校に造家学科が新設される（工学院大学建築学科の前身）。
1955年4月：工学院大学工学部に建築学科が増設される。
1991年：第1部建築学科に建築学コース、都市建築デザインコースを新設。
1999年：都市建築デザインコースが廃止され、建築都市デザイン学科が新設される。
2010年：建築学部の設置が認可される（まちづくり学科、建築学科、建築デザイン学科）。
2011年4月：工学院大学に建築学部が新設される。

所在地

工学院大学建築学部は、主に八王子キャンパス（東京都八王子市中野町2665-1）にて教育・研究活動を行っています。一部、新宿キャンパス（東京都新宿区西新宿1-24-2）も利用されます。それぞれのキャンパスへは公共交通機関によるアクセスが可能です。

八王子キャンパス：JR八王子駅、京王八王子駅、JR・西武拝島駅などからバス。
新宿キャンパス：JR、京王線、小田急線、地下鉄各線「新宿駅」などから徒歩圏内。

これらの取り組みを通じて、工学院大学建築学部は、変化し続ける社会のニーズに応え、建築界の発展に貢献できる多様な人材育成を目指しています。

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