工業所有権の保護に関するパリ条約

工業所有権の保護に関するパリ条約

工業所有権の保護に関するパリ条約は、1883年にフランスのパリで締結された国際条約で、特許、商標などの知的財産権の保護を目的としています。この条約はフランス語が正文であり、他の言語にも公式訳文が存在します。

条約の背景と主要な原則

この条約は「万国工業所有権保護同盟条約」として知られ、特に内国民待遇の原則、優先権制度、各国工業所有権独立の原則の三つの基本原則を基礎に構成されています。

1. 内国民待遇の原則 - 各国は、自国民に対する特権や権利を、他の加盟国の国民にも等しく提供しなければなりません。これは、外国人が自国で享受している権利を自国でも享受できることを保障するものです。

2. 優先権制度 - ある加盟国において出願した知的財産権に対し、他の加盟国における出願時に特定の優先権が認められます。この制度により、出願者は先に出願した国の出願日を基準に新規性が考慮されます。

3. 各国工業所有権独立の原則 - 各国は独自に特許や商標の権利を保持し、他国の申請や保護がそれに影響を及ぼさないことが保証されています。

条約の適用範囲

条約の保護対象としては、特許、実用新案、商標、意匠、原産地表示などが含まれ、工業や商業に留まらず、農業分野の商品や天然資源も対象に含まれます。特に商標については商品商標に特化しており、役務商標については各国の国内法に委ねられています。

加盟国と改正の歴史

現在、パリ条約は179か国の加盟国を持ち、数回の改正が行われています。主な改正には、ブラッセル改正条約（1900年）、ワシントン改正条約（1911年）、リスボン改正条約（1958年）、ストックホルム改正条約（1967年）などがあります。これらの改正は、特許や商標の保護範囲や権利の明確化を目的としており、国際的な知的財産権の保護の枠組みを強化しています。

特に、ストックホルム改正条約では発明者証制度が新たに導入され、権利保護の一層の充実が図られています。加盟国は最新の改正条約に従うことが義務付けられており、日本もストックホルム改正条約に加盟しています。

結論

パリ条約は国際的な工業所有権を保護するための重要な枠組みとして機能しており、特許や商標の権利を持つ者に対して、各国での保護を相互に保証する法律の基盤を築いています。これにより、知的財産権の国際的な流通と保護が進展し、創造性やイノベーションの促進に寄与しています。

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