左卜全

左卜全（ひだり ぼくぜん）について

左卜全（本名：三ヶ島一郎）は1894年2月20日に埼玉県入間郡小手指村に誕生した日本の俳優、オペラ歌手です。彼の家系は代々、埼玉県入間郡三ヶ島村にある氷川神社の神官を務めていましたが、祖父の代に分家し、一族が新たに立ち上げた一族でした。

幼少期からの経歴

彼は北野小学校に入学した後、父の転勤によって麻布区に移り、更に船堀村に転校しました。船堀小学校を卒業後は、様々な仕事に従事しながら立教中学校に短期間通いましたが、学業は続けられませんでした。

1914年には「帝劇歌劇部」に第3期生として入団し、オペラ歌手としての基礎を作りましたが、舞踏家志望だったものの、劇団の解散に伴いその道は断念。小さな劇団を渡り歩く中で、1920年には関西へ移り「新声劇」に参加しました。1926年には「松旭斎天華一座」に入団し、三ヶ島天晴（みかじま てんせい）として活動を始めました。

活動と健康問題

1935年に東京に戻ると、新宿の「ムーランルージュ新宿座」に参加し、喜劇俳優として名を馳せました。この頃、彼は左脚に突発性脱疽を発症し、医師から切断を勧められましたが、俳優としての職業を続ける決意を固め、松葉杖を使用しながら演技を続けました。

1945年には「劇団たんぽぽ」に参加し、1946年に遠い親戚の小暮糸と結婚。同年、小崎政房が座長を務める「劇団空気座」の結成に参加し、1949年には映画『女の顔』で銀幕デビューを果たしました。以降、左卜全は個性豊かな老人役を数多く演じ、黒澤明監督の作品にも出演。特に『生きる』や『七人の侍』、さらには『どん底』において、彼の存在感は際立ちました。

音楽活動と晩年

1970年、左卜全は『老人と子供のポルカ』で歌手としてデビューし、76歳で「史上最高齢の新人歌手」として注目を集めましたが、彼の楽曲は当初の予想以上のヒットを記録しました。残念ながら1971年には老衰により77歳でこの世を去り、最期の言葉は小さく「は〜い」と返事をし、妻に看取られながら静かに幕を閉じました。

人物と逸話

左卜全は「変人」として知られ、日々、芸を磨く姿勢は真剣そのものでした。「私の芸は日々の苦しみの中で育まれた」と語った彼は、舞台でも私生活でも遊び心とユーモアを持った個性的な存在でした。また、撮影所では体調を気遣いながらも、脚の障害があるにもかかわらず、他の俳優たちと同じように忙しく活動しました。

これらの背景から、左卜全は日本の映画界のみならず、歌謡界でも愛され続け、その独特なキャラクターと有名な逸話は今なお語り継がれています。彼の遺した作品や、彼自身の人生の背景は、多くの人々に感動を与えています。

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