ムーランルージュ新宿座

ムーラン・ルージュ新宿座：昭和初期、新宿を彩った大衆演劇の殿堂

ムーラン・ルージュ新宿座は、1931年から1951年まで、東京・新宿に存在した大衆劇場です。パリの「赤い風車」を意味する本家ムーラン・ルージュと同様に、建物の上に赤い風車が飾られていました。

新宿ムーランの誕生と隆盛

1931年12月31日、佐々木千里によって開場したムーラン・ルージュ新宿座は、浅草オペラの流れを汲みつつ、新たな大衆演劇の拠点として新宿に根を下ろしました。龍胆寺雄、吉行エイスケ、楢崎勤といった文化人を顧問に迎え、レビューや軽演劇など多彩な演目を上演。学生や知識層を中心に人気を集め、新宿の新たな文化を牽引しました。

1932年には、歌手の高輪芳子の心中事件が大きく報道され、劇場名が広く知られることになります。しかし、これを機に劇団は独自のカラーを確立。バラエティー豊かな演目を次々と生み出し、満員御礼となるほどの人気を博しました。小崎政房のように、作家と俳優の二足のわらじを履く人物も現れ、ムーラン独自の才能が開花していきました。

1933年から1935年頃が全盛期で、新宿の街のシンボルとして親しまれました。早稲田大学の学生や近隣の文化人たちも頻繁に訪れ、活気あふれる空間を共有しました。

戦時下の苦難と戦後の再開、そして閉館

第二次世界大戦中、ムーラン・ルージュは敵性語として「作文館」と改名。1945年の空襲で劇場が焼失し、公演は一時中断を余儀なくされます。戦後、名称使用の権利問題や経営難に直面しながらも、1947年に公演を再開。「フーテンの寅さん」のおばちゃん役で知られる三崎千恵子も座長として活躍しました。

しかし、ストリップショーなどの新しい娯楽の台頭により、ムーラン・ルージュは次第に観客を失い、1951年5月に閉館。20年間の歴史に幕を閉じました。

閉館後の跡地と記憶

ムーラン・ルージュ新宿座の跡地には、新宿国際会館ビルが建設され、成人映画館やストリップ劇場が入居しました。その後、喜劇小屋「新宿コメディシアター」が開場するなど、様々な変遷を経て、2017年には商業ビル「GLITTERS Shinjuku」が建てられました。

2011年には、劇場生誕80周年を記念し、関係者へのインタビューを基にした記録映画『ムーランルージュの青春』が公開され、往時の熱狂が再び脚光を浴びました。

ムーラン・ルージュ新宿座を彩った人々

ムーラン・ルージュ新宿座からは、数多くの作家、俳優、歌手が輩出されました。以下に主な人物を列挙します。

作家: 龍胆寺雄、吉行エイスケ、楢崎勤、島村竜三、伊馬鵜平、小崎政房
俳優・歌手: 高輪芳子、有馬是馬、森野鍛冶哉、ムサシノ漸、山口正太郎、鳥橋弘一、轟美津子、春日芳子、三国周三、水町庸子、望月美恵子、小柳ナナ子、明日待子、姫宮接子、大空千尋、藤尾純、水島道太郎、武智豊子、左卜全、有島一郎、宮城けんじ、由利徹、益田喜頓、三崎千恵子、竹久千恵子、外崎恵美子、春日八郎、沢村いき雄、市村俊幸、水谷八重子 (初代)、千石規子、郷宏之、矢田茂、若水ヤエ子、三木のり平、藤原釜足、楠トシエ、森繁久彌、谷幹一、鈴懸ぎん子、久野四郎

ムーラン・ルージュ新宿座は、昭和初期の新宿に独特の文化を築き、多くの人々に愛された大衆演劇の殿堂でした。その記憶は、映画や書籍を通じて、今もなお語り継がれています。

もう一度検索