左右田孫兵衛

左右田孫兵衛：忠義と生きた吉良家家老の生涯

左右田孫兵衛（そうだ まごべえ、1636年-1723年）は、江戸時代前期に活躍した武士であり、高家吉良家の家老として仕えました。名は重次（しげつぎ）。

孫兵衛は、上杉綱憲の次男である吉良義周が吉良家を相続した際に、その家老として仕えることになります。100石の知行高を得て、義周に付き従いました。

有名な赤穂浪士による吉良邸討ち入りでは、孫兵衛の子とされる左右田源八郎が討ち死にしました。しかし、孫兵衛自身は生き延び、討ち入り後には泉岳寺から吉良義央の首級を受け取っています。この出来事が、孫兵衛の生涯に大きな影を落とすことになります。

吉良家が改易され、義周が諏訪高島藩預かりとなると、孫兵衛は義周と共に高島城へ移り住み、義周の死まで仕え続けました。高島藩では義周は「左兵衛様」と敬称され、高い身分を保ちました。高島城の南之丸には義周のための屋敷が新築され、孫兵衛は中小姓や徒士などの家臣団とともに、義周の生活を支えました。

当時の記録によると、孫兵衛は義周の身の回りの世話を細やかに務めていた様子が伺えます。例えば、義周の居室に炬燵を置くように指示したり、食事には二汁五菜を用意するなど、温かい配慮がうかがえます。藩士の渡辺治左衛門の記録によれば、孫兵衛は義周の慰安のため、一尺四寸の横笛を持参していたとも伝えられています。

義周は宝永3年（1706年）に21歳で亡くなりました。現在、諏訪の法華寺には義周の墓と供養塔が残されており、諏訪大社にも義周の墓と、義周自身の書による碑が建立されています。

義周の死後、孫兵衛は三河国吉良に戻り、余生を過ごしました。享保8年（1723年）、88歳でこの世を去りました。吉良吉田の正覚寺に墓が建立され、法名「釈順知」と刻まれています。

忠臣蔵の物語では、孫兵衛は斎藤宮内と共に長屋の壁を破って逃げたという創作も存在しますが、史実においては吉良邸を守り、赤穂義士と戦ったとされています。

孫兵衛の生涯は、主君への忠義を貫き、激動の時代を生き抜いた武士の姿を物語っています。忠臣蔵という大きな事件に関わりながらも、その生涯は、主君への献身と、家老としての職務に忠実であったことを示しています。その生き様は、後世に語り継がれるべき、貴重な歴史の一端となっています。

孫兵衛をテーマとした小説や美術作品も存在しており、その生涯は様々な形で表現され、現代にまで受け継がれています。小説『妖笛』や『義周と新八郎の場合』など、孫兵衛の人生を様々な視点から描いた作品が創作されています。また、浮世絵『忠臣義士高名鑑』にも孫兵衛の姿が描かれています。これらの作品を通して、孫兵衛の生涯とその時代背景をより深く理解することができます。

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