左岸ウクライナ

左岸ウクライナとは

左岸ウクライナ（さがんウクライナ；ウクライナ語：Лівобережна Україна）は、ウクライナを流れ黒海へと注ぐドニプロ川の左岸、つまり東岸に位置する地域を指す歴史的な地名です。現在の行政区分でいうと、キーウ州とチェルカースィ州の東部、チェルニーヒウ州、ポルタヴァ州、そしてキーウ周辺地域がこれに該当します。

歴史的背景

「左岸ウクライナ」という名称が歴史資料に登場し始めたのは17世紀後半のことです。1667年のアンドルーシウ条約によって、当時のウクライナ・コサック国家がポーランドとロシアの間で分割されることになり、キエフを含むドニプロ川左岸のコサック国家領土はロシアの支配下に入りました。この地域が「左岸ウクライナ」と呼ばれるようになったのです。

左岸ウクライナでは、ヘーチマンを長とするコサックによる自治制度が存在していました。しかし、1709年、大北方戦争中にヘーチマンのイヴァン・マゼーパがロシアに対する反乱を起こしたことで、コサックの自治権は大幅に縮小されることになります。1722年にはヘーチマンの政府が廃止され、1734年以降はロシア政府の機関である小ロシア委員会がコサックの統制を行うようになりました。その後、ヘーチマン政府は一時的に復活したものの、1764年に最終的に廃止されました。これにより、コサック国家は事実上解体され、1781年にはコサックの地域にチェルニーヒウ代官地、ノーヴホロド・シーヴェルシクィイ代官地、キエフ代官地が設置されました。さらに1796年には、これらの代官地が小ロシア県として統合されましたが、1802年にはチェルニゴフ県とポルタヴァ県に分割されました。

近現代

1917年、左岸ウクライナはウクライナ人民共和国の一部となりましたが、1918年から1919年にかけてのウクライナ内戦を経て、ボリシェヴィキ系のウクライナ・ソビエト社会主義共和国の領土となりました。そして現在、1991年にソ連から独立したウクライナが左岸ウクライナを領有しています。ただし、チェルニーヒウ地方の一部であるスタロドゥブ地域は、ロシア連邦とベラルーシの支配下にあります。

参考文献

伊東孝之,井内敏夫,中井和夫『ポーランド・ウクライナ・バルト史』山川出版社, 1998.12.（新版世界各国史 ; 20）

外部リンク

左岸ウクライナ（ウクライナ百科辞典） （英語）
Довідник з історії України. За ред. І. Підкови та Р. Шуста. — Київ: Генеза, 1993. （ウクライナ語）
ニュース - 文化 - 混迷のウクライナ、その歴史的経緯 - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト（ナショジオ） Eve Conant, for National Geographic News, January 31, 2014

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