左衛門尉

左衛門尉（さえもんのじょう）

左衛門尉は、日本の律令制下における官職の一つです。左衛門府の判官であり、位階は六位相当とされていました。しかし、五位の者が任じられた際には、左衛門大夫、または大夫尉と称されることもありました。また、検非違使を兼任した場合には、廷尉という俗称も用いられました。

律令制下の左衛門尉

左衛門府は、宮中の警護や門の管理を司る役所であり、その判官である左衛門尉は、府の事務を処理する役割を担っていました。律令制度においては、官職は位階と結びついており、左衛門尉は六位の官職として定められていました。しかし、実際には五位の者が任命されることもあり、その場合は左衛門大夫や大夫尉という上位の官名で呼ばれました。

源義経と左衛門尉

歴史上、左衛門尉に任じられた人物として特に有名なのが、源義経です。平家追討で活躍した義経も、この官職に任じられていました。これは、武士が朝廷の官職に任じられることで、その権威と地位を公的に認められるという側面があったことを示しています。

武士の台頭と左衛門尉

鎌倉時代以降、律令制が形骸化し、官職としての左衛門尉は実質的な意味を失っていきました。しかし、武士が台頭するにつれて、武官の職は武士の間で広く好まれるようになりました。左衛門尉もその一つであり、多くの武将たちがこの官職に任じられるか、あるいは受領名として使用するようになりました。これは、武士たちが自らの家格や権威を示す手段として、官職名を利用したためと考えられます。

中世以降の左衛門尉

中世から江戸時代にかけて、左衛門尉は武士にとって名誉ある称号として扱われ続けました。特に戦国時代の武将たちは、自らの武功や家柄を示すために、この官職名を好んで用いました。江戸時代になると、武士の官位制度は形式化しましたが、左衛門尉は依然として武士の間で広く用いられ続けました。受領名として用いられることが多かったこの官職名は、武士の社会において重要な意味を持ち続けました。

関連事項

左衛門府：宮中の警護や門の管理を司る役所。
左衛門督：左衛門府の長官。
* 左衛門佐：左衛門府の次官。

左衛門尉は、律令制下の官職として始まり、中世以降は武士の間で名誉ある称号として受け継がれてきました。その歴史を辿ることで、日本の官位制度や武士社会における官職の変遷を理解する上で重要な手がかりとなります。

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