受領名

受領名の意義と歴史

受領名（ずりょうめい）は、主に前近代の日本において武家や神職が使用した非公式な官職名です。特に室町時代から戦国時代にかけて、守護大名や戦国大名は、武功や功績を上げた家臣に対してこの名称を授ける慣習がありました。受領名は、正式な官職名ではなく、主に名誉的な意味合いを持つものでした。

商工業者への受領名の授与

朝廷や寺院は、京都において商工業者や芸能者に対して非公式な官名を授けました。この目的は、彼らの家格や家業に価値を持たせることであり、特に金品や貢献度に応じて「守」「介」「掾」などの受領名が授与されました。受領名を持つ商工業者は、取扱う商品に特別な附加価値を付与されるため、同業者の商品よりも高値で取引されることが一般的でした。このように、受領名の授与は商売繁盛と名誉を追求する手段として機能しました。

また、武家によって荘園を奪われた朝廷や寺院にとって、官位や受領名の授与は、重要な収入源ともなりました。これは、公式の位階にこだわらず、実質的な権威と収益を確保するための一手段だったのです。

武家における受領名の風習

室町時代以降、守護大名は武功によって名を成した家臣や被官に対して、正式な位階を伴わない非公式の官名を賜りました。この風習は、主に城や領地、兵力を有する武士たちを対象とし、彼らの社会的地位を確認する意味合いを持っていました。受領名を授かる際には、通常「官途書出」や「官途状」などの公式な文書が交付され、これが武士の栄誉を示すものとされました。

江戸時代を迎えると、受領名を授与する慣習は引き続き存在しましたが、幕藩体制下では、官位が身分秩序の維持に用いられ、戦国時代の自由な授受は減少していきました。特異なケースとして古河公方の流れを汲む喜連川氏が代々、非正規の官名である左馬頭や左兵衛督を私称することが容認された例があります。

受領名授与の終焉

時が経つにつれ、明治政府は1869年に仁和寺や大覚寺などに対して受領名授与の廃止を決定しました。このもと、受領名の授与を受けた者にはその利用が停止されると告知され、寺院による受領名の授与の歴史は幕を閉じました。

参考文献

• - 小和田哲男 「今川義元はなぜ三河守か？-武士と官途受領名」『日本史に出てくる官職と位階のことがわかる本』 新人物往来社、2009年
• - 国史大辞典編集委員会編『国史大辞典第3巻』（吉川弘文館、1983年）
• - 所功 「日本史のなかの官職と位階」『日本史に出てくる官職と位階のことがわかる本』 新人物往来社、2009年

このように、受領名は日本の前近代社会において、武士や商工業者の地位を示す重要な役割を果たし、歴史的な背景を持つ魅力的な文化の一つと言えるでしょう。

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