左近径介

左近 径介

1949年に栃木県宇都宮市に生まれた左近径介（さこん けいすけ）は、日本の古楽器、リュートの第一人者として知られる演奏家です。彼のキャリアは、地元の宇都宮東高等学校を卒業した後、音楽の道を本格的に志したことから始まります。

ドイツでの学び

音楽への情熱を胸に、彼はドイツへと渡り、ケルン音楽大学に入学しました。当初はギターを専攻し、1976年にその課程を修了しましたが、彼の探求心はさらに古楽器へと向けられました。同じケルン音楽大学でリュート科に転じ、ミヒャエル・シェーファー氏、そしてコンラート・ユングヘーネル氏という、当時を代表するリュート奏者・教育者に師事することになります。彼らの指導のもと、左近氏はリュートという楽器が持つ深い歴史と独特の響きについて徹底的に学び、その演奏技術と音楽性を磨き上げました。1979年、彼はリュート科を無事に卒業し、日本への帰国を果たします。

帰国後の活動

ドイツでの充実した学びを終え帰国した左近氏は、すぐさまその活動を開始しました。帰国と同年の1979年9月には、自身初のソロリサイタルを開催。これが、日本における彼の演奏家としての本格的な第一歩となりました。その後、彼は国内外を問わず数多くのコンサートに出演し、聴衆を魅了しました。

演奏活動と並行して、左近氏はメディアの世界でも積極的にリュート音楽を紹介しました。ニッポン放送の「新日鉄コンサート」や、NHK-FMの「午後のリサイタル」「FMリサイタル」といったクラシック音楽番組にたびたび登場し、リュートの繊細かつ豊かな音色を全国に届けました。また、NHKスペシャル「フィレンツェ・ルネサンス」のような特別番組にも関わり、リュートが重要な役割を果たしたルネサンス期の音楽文化を紹介するなど、その活躍の場は多岐にわたりました。

教育者として

演奏家としての活動に加え、左近氏はリュート音楽の普及と後進の育成にも情熱を注ぎました。聖グレゴリオ音楽院でリュートの講師を務め、若い世代の音楽家たちに自身の知識と技術を伝えました。千葉市美浜区に構えた自宅を拠点に、演奏活動と指導活動を両立させ、日本の古楽シーンの発展に貢献しました。

晩年

長年にわたり精力的な活動を続けてきた左近氏ですが、2006年からは演奏活動に専念することを決めました。しかし、2007年頃から体調に異変を感じるようになり、第一線から退かざるを得なくなります。検査の結果、悪性リンパ腫という診断を受け、彼は演奏の場から離れ、病との長い闘いを始めることになりました。療養のため、彼は静岡県伊東市に移り住み、約1年半にわたり入退院を繰り返しながら闘病生活を送りました。懸命な治療にもかかわらず、病状は回復せず、2009年1月1日、3度目の入院中に伊東市内の病院でその生涯を閉じました。享年59歳でした。左近径介氏の逝去は、日本の古楽界にとって大きな損失となりましたが、彼がリュート音楽の普及に果たした功績は長く記憶されています。

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