巫病

巫病（ふびょう）とは

巫病とは、シャーマン（巫）がその職能を獲得する過程、すなわち成巫（せいふ）過程において見られる特有の心身の異常状態を指します。これは、特定の個人がシャーマンとしての役割を担うべく、神霊から選ばれるという召命型のシャマニズムにおいて、非常に重要な段階と位置づけられています。

巫病の症状と解釈

巫病は、多くの場合思春期に発症し、その症状は多岐にわたります。発熱、幻聴、神の出現する夢といった初期症状から、重症化すると昏睡、失踪、精神錯乱、異常行動などを引き起こすこともあります。これらの症状は、地域や文化圏を問わず、世界的に類似している点が特徴的です。

シャマニズムの信仰では、巫病は神がシャーマンとなるべき者を指名している兆候と解釈されます。この神の要請は、本人の意志で容易に拒否できるものではなく、拒否した場合には異常行動が悪化し、最悪の場合には死に至ることもあります。そのため、巫病を発症した者は、通常、経験豊富なシャーマンから神の意思に従うよう助言を受けます。

巫病の克服は、夢を通じて神から与えられる指示に従ったり、神社への参拝や社会奉仕活動などを通じて行われると信じられています。これらの行為を通じて、神との関係を深め、自己を浄化することで、巫病は徐々に解消されていくとされます。そして、巫病を乗り越えることによって、その人は一人前のシャーマンとして認められるのです。

シャーマンと巫病の関係

巫病を経験し、シャーマンとなった者は、神を自らの身に憑依させ、神の言葉を人々に伝えることができるようになると信じられています。しかし、シャーマンとしての活動を辞めてしまうと、再び巫病を発症する可能性があると考えられています。これは、シャーマンとしての役割と神との繋がりが、その人の心身に深く根ざしていることを示唆しています。

巫病が確認されるシャーマンの例

巫病の概念は、様々な文化圏のシャーマンに見られます。例えば、沖縄県のユタやノロ（巫病はカンダーリィと呼ばれる）、青森県のイタコやゴミソ、アイヌのトゥスクル、韓国のムーダン（巫堂）などが挙げられます。これらのシャーマンたちは、それぞれの文化の中で巫病を経験し、神との繋がりを深めながら、人々の精神的な支えとなっています。

医学的見解

巫病は、精神病理学の分野でも研究対象とされています。医学的には、ノイローゼ、偏執、てんかん、錯乱などの精神疾患の一種と考えられていますが、その根本的な原因は未だ解明されていません。しかし、巫病の症状が、シャーマニズムの信仰に帰依することで軽減される事例が認められており、精神的な要素が大きく影響していることが示唆されています。

関連項目

卑弥呼
ジャンヌ・ダルク

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