巫臣

巫臣の生涯とその影響

巫臣（ふしん）は、中国の春秋時代に活躍した楚の公族で、政治家としても知られています。生没年は不詳ですが、彼の人生と行動はその後の歴史に大きな影響を及ぼしました。巫臣は楚の荘王に仕え、国防を担っていた重要な人物であり、彼の業績は今でも語り継がれています。

初期の経歴

巫臣の本名は羋（び）といい、氏は屈で、文中では子霊（しれい）とも名乗られていました。彼は楚の武王時代に屈瑕を祖に持つ屈氏の一族として生まれ、早くから荘王に重用されました。彼は軍事や外交における重要な役割を果たし、特に申の長官として名を馳せました。しかし、巫臣は国を離れ、後に晋に仕官することとなります。この不遇の時期に彼は、政治の駆け引きや外交戦略を身につけていったのです。

夏姫との出会いと結婚

巫臣は荘王16年（紀元前598年）、楚の荘王が陳の軍を攻める際に、絶世の美女として名高い夏姫と出会いました。夏姫は夏徴舒の生母であり、その戦いを通じて荘王が彼女を手に入れようとしたとき、巫臣はそれに反対しました。「美人を得るための戦いではない」と言い、荘王を思いとどませた巫臣の言葉は、彼の卓越した見識を示しています。しかし、荘王が夏姫を他へ与えた後、巫臣は彼女を妻に迎え入れるために動き出しました。

戦士として命を落とした襄老の後、巫臣は夏姫に帰国を促し、自らの妻として迎える手続きを整えました。荘王の死後、巫臣はじきに楚を離れ、夏姫を迎え入れるために奔走しました。彼は晋の襄公に夏姫との結婚を承諾させ、見事に彼女を手に入れました。

政治的復讐

巫臣の名声が高まる中、当時の楚の公族である子反と子重（公子嬰斉）は、自分たちの立場を揺るがす巫臣を排除しようと試みました。しかし、彼らの計画は未遂に終わります。それどころか、巫臣に対する復讐を誓った子反と子重は、屈氏の一族を残虐に殺害します。これを知った巫臣は、自らの復讐を誓い、楚の公族たちに対し宣戦布告をしました。彼は晋公に呉との国交を結ぶことを進言し、実際に呉との外交を成立させました。

この結果、呉国は次第に力を増し、楚にとっての脅威となるのです。巫臣の策略により、子反と子重は呉と晋の両国に挟まれ、最終的に二人はそれぞれの運命を全うしました。これにより、巫臣の復讐は成功を収め、楚の政治的状況は大きく変わりました。

意義と遺産

巫臣は、その後も日々の政治に関与し、彼と夏姫の間には子供が生まれました。その娘は後に晋の公族である羊舌肸の妻となり、さらに巫臣の血脈は引き継がれていきます。彼の生涯や業績、復讐劇は、後世の文学や記録に残ることとなり、楚の歴史に深く刻まれています。彼の策略や行動は、ただの復讐だけではなく、当時の権力闘争の一部であり、数世代にもわたり影響を与えるものでした。巫臣の物語は、力と知恵を持つ者がいかにして運命を変えるかを教えてくれる重要な教訓を含んでいます。

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