己巳換局

己巳換局（キサファングク）

己巳換局は、朝鮮王国第19代国王である粛宗の治世にあたる1689年に発生した政権交代の出来事です。この事件では、宮廷での権力が西人派から南人派に移行しました。

背景と経緯

1688年、朝鮮王国の後宮において、女官の張氏が王子・昀を出産しました。この王子の誕生は、粛宗にとって非常に喜ばしい出来事でしたが、当時の政権を担っていた西人派は、正妃である仁顕王后が子を産む可能性があることから、彼女の嫡子である王位継承者の誕生を優先視していました。その意向に反抗した昀への元子称号の付与は、政敵である西人派にとってさらなる緊張を生む結果となったのです。

1680年の庚申換局により、南人派は追放されており、西人派が政治を支配していました。しかし粛宗は張氏とその新たに生まれた王子を支援し、このことで新たな権力構図が形成されていきます。

張氏の台頭

粛宗の正妃仁敬王后が1680年に死去した後、仁顕王后が新たに迎えられましたが、彼女は長期間男子を出産できませんでした。そんな中、女官として登場した張氏はその美貌により王の寵愛を受け、次第に立場を強化していきました。しかし、明聖王后により一度追放されますが、彼女の死後に復帰し、粛宗の愛情をより一層受けることになります。その結果、張氏は高位に昇格し、南人派から全面的な支持を受けることとなりました。

元子称号の付与

1689年1月、粛宗は大臣を招集し、昀に元子の称号を与えることを提案しました。これは、正妃仁顕王后がまだ若く、嫡子が生まれる可能性が十分にあったため、時期尚早だとみなされました。しかし粛宗はこれを押し切り、昀を元子に任命しました。この決定は西人派の重臣たちを激怒させ、反発を呼びました。

粛宗は、西人の意見を排除し、張氏の支持基盤を強化するために、官職を持つ西人派の官僚たちを処罰し、結果として南人派の官僚たちを抜擢しました。この政権交代は、約100人以上の官僚の追放を伴い、南人派が新たに重要な役職を占めることにつながりました。

余波と結果

政権交代に際して、粛宗は仁顕王后の廃位を決定し、彼女の地位が剥奪されました。さらに、仁顕王后支持者への反発も強く、多くの者が流刑されました。 張氏はこの後、正妃に昇格し、王の寵愛をより強固にしました。

最後に、西人派の指導者である宋時烈は年齢により尋問を免れ、賜死とされました。彼の残した遺書は、彼の死後も語り継がれています。己巳換局はこうして、一つの大きな転換点となり、朝鮮王国の政治状況を根本的に変える出来事となりました。

文化的影響

この出来事は、後にテレビドラマや文学作品に繰り返し描かれることで、韓国の歴史の中で強い印象を残しています。特に、張氏を中心にした作品が数多く制作されており、彼女の魅力や権力争いが視覚的に再現されています。

まとめ

己巳換局は、朝鮮王国における派閥闘争の象徴であり、政治だけでなく文化や社会においてもその影響を残した重要な歴史的な出来事です。

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