巻原子力発電所

巻原子力発電所計画の概要

巻原子力発電所は、東北電力が新潟県西蒲原郡巻町の角海浜地区で計画していた原子力発電所である。この計画は1969年に報道され、1971年に正式発表された。最初の運転開始は1982年を目指していたが、様々な問題によって計画は進展しなかった。

計画の進展と課題

1971年3月、東北電力は建設計画を発表し、その後2年後に1982年の運転開始を目指すことを発表。この計画の施行に際して、既に限界集落化していた角海浜では1971年に集団離村が行われた。また、計画の前から東北興産を通じ、遊園地の名目で土地の買収を進めていた。

1983年には、安全審査が中断されるという事態が発生し、その後計画は停滞を余儀なくされた。原子力発電所の誘致に賛同した町の議会および町長・県知事の同意が得られたにもかかわらず、地域の住民は主に外部の事故による不安を抱えるようになった。特に、スリーマイル島事故（1979年）やチェルノブイリ事故（1986年）を受け、原発に対する懸念が高まる中で、巻町では反対運動が展開された。

自主管理住民投票の実施

1995年2月に実施された自主管理住民投票では、反対派が圧倒的多数を占め、原発賛成と反対で474対9854という結果となった。この結果を受け、東北電力は町の有地の売却を請求したが、計画の凍結解除を望む町長による売却試みは、反対派の座り込みによって阻止された。

その後の町議選で反対派が過半数を獲得し、10月には町長に対するリコール運動が起こり成功を収めた。この結果、反対派の笹口孝明が新町長となり、1996年には日本初の住民投票によって反対派が勝利した。

計画の最終的な撤回

1999年には、笹口町長が議会を通さず反対派に町有地を売却した。この際の契約には土地処分を禁止する条項があり、これにより原子力発電所の建設は事実上不可能となった。推進派の議員が所有権の移転登記を抹消する訴訟を起こしたが、2003年には最高裁判所によってその訴えは受理されなかった。

最終的に、東北電力は2003年12月24日に巻原子力発電所の計画を撤回し、2004年には公式に原子炉設置許可の申請を取り下げた。これにより、長年続いた計画は完全に終息を迎え、巻町の地域社会は新たな未来に向けての歩みを始めることとなった。

設備計画の概要

巻原子力発電所は、敷地面積約220.8万m²の広大な土地に、1号機として沸騰水型軽水炉を設置する計画であった。定格電気出力は82.5万kWを予定し、着工は2006年度、運転開始は2012年度を目指していたが、いずれも実現には至らなかった。

まとめ

巻原子力発電所計画は、地域の住民運動や意見表明の重要性を示す事例として歴史に刻まれている。原発建設に関する住民投票を通じて、地域の意向が計画に大きな影響を与えることを証明した。この一連の出来事は、今後のエネルギー政策や地域の意思決定においても、重要な参考となるだろう。

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