巻狩

巻狩（まきがり）の概要

巻狩は、中世日本において遊興や神事祭礼、さらには軍事訓練の一環として行われた大規模な狩猟の形式です。この狩猟方法は、特に鹿や猪といった獣を対象にしており、参加者が四方から狩場を取り囲み、獲物を追いつめながら射止めるというスタイルが特徴です。「巻狩り」という表現は、狩猟の様子を示す言葉であり、狩場を巻き込むようにして獲物を捕えることに由来しています。

有名な巻狩の例

九重山の巻狩

その典型的な例が、九重山での巻狩です。ここでは、梶原景高が肥後国の阿蘇大宮司に狩礼の式を尋ね、伝統的な方法で狩猟が行われました。この地域、現在の阿蘇くじゅう国立公園に当たる九重山は、当時は神聖視されており、殺傷が禁じられていました。しかし巻狩は、軍事演習としても行われ、特に草原に火を放って獲物を追い込む方法が取られていました。この慣習は、山岳信仰とも関連が深く、九重連山の南側には供養のための寺院が置かれ、猪鹿狼寺と呼ばれるようにもなりました。

富士の巻狩

また1193年には富士山での巻狩が行われました。これは、ただの遊びにとどまらず、軍事的な意義も持った重要なイベントであり、貴族たちによる壮大な狩猟劇が繰り広げられました。中世の人々にとって、巻狩は戦の準備や神事の一環として位置づけられており、多くの参加者が集いました。

秋田藩の巻狩

近世においても巻狩は存続しました。特に秋田藩の男鹿半島では、ニホンジカを対象とした巻狩が行われました。ここでは他所から連れてきたニホンジカを繁殖させ、その環境で狩るという方法が採用されていました。1722年、享保7年の巻狩では、27,100頭もの鹿が狩られ、その結果、男鹿半島に生息していたニホンジカは全滅してしまいました。この事例は、環境への影響や狩猟の在り方について現代においても考えさせられるものです。

関連項目

巻狩に関連する文化や風俗も多様です。たとえば、那須光資、鷹狩、騎射三物などは、巻狩と同時期に行われていた狩猟活動であり、各々に独自の方法や意義があります。これらは、古代から続く日本の狩猟文化の一端を示しており、今日でも様々な形で語り継がれています。

参考文献

• - 長者原ビジターセンター (2020). "登山と[山岳信仰]]の歴史".

[長者原ビジターセンター. 2023年6月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月21日閲覧。

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