市場価値

市場価値とは

市場価値とは、ある時点において、買い手と売り手が市場に関する十分な情報を持ち、強制されることなく、自らの意思で取引を行う際に成立すると考えられる、その資産の評価額を指します。一般的には「適正な時価」や「正常な取引価格」とも呼ばれます。この概念は、不動産鑑定や人材評価など、様々な分野で重要な役割を果たしています。

不動産鑑定における市場価値

不動産鑑定において、市場価値はすべての不動産価値の基本となる概念であり、日本の不動産鑑定評価基準における「正常価格」と同義と解釈されています。市場価値を評価する際には、その不動産の特性や、公開市場での取引可能性を考慮した評価方法と手順が用いられます。具体的な評価方法としては、原価法、取引事例比較法、収益還元法などが一般的です。

評価上の留意点

価格時点: 市場価値は、評価を行う特定の時点（価格時点）における価格です。過去や未来の価格ではなく、価格時点の市場状態を反映します。
公正な取引: 親会社と子会社間などの特別な利害関係がない、公正な立場の取引を前提としています。
最有効使用の判定: 対象不動産が最大限の価値を発揮する可能性の高い使用方法（最有効使用）を判断する必要があります。最有効使用は、現行の用途を継続する場合もあれば、異なる用途の場合もあります。
現行用途使用を前提とした評価: 現行の用途が最有効使用でなくても、現行の用途で市場売却されることを前提として評価する場合があります。この場合、最有効使用に基づく市場価値との差は、建付減価として認識されることがあります。

人材評価における市場価値

人材紹介業においては、労働者の労働市場における価値を市場価値と呼びます。組織人材分析や企業内研修において、組織内外で活躍できるかどうかを測る指標として活用され、転職時の推定年収を算出する際にも用いられます。

市場価値の経緯

1990年代中盤までは、市場価値という言葉は一般的ではありませんでした。しかし、大企業の経営破たんや転職市場の成長を背景に、社外からの評価が重視されるようになりました。市場価値測定研究所が「市場価値測定テスト」をリリースし、マスコミで取り上げられたことで、一般に広く知られるようになりました。

市場価値の評価方法

人材の市場価値は、コミュニケーション能力やストレスコントロール能力などの基礎能力と、所有資格や実務経験などの専門・実務能力に基づいて評価されます。近年では、大手人材紹介会社が職務経歴に基づく年収査定サービスを提供しており、雇用流動化に伴い、市場価値を測定するサービスが急速に広まっています。

市場価値に関連する用語

不動産業関連: 早期売却価格、正味実現可能価額、回収可能価額、担保評価額、強制売却価格、財産処分価額、事業継続価値、取得補償額、投資採算価値、正常価格、限定価格、特定価格、特殊価格、公示価格、路線価、固定資産税評価額
人材関連: 人材紹介業、人材、ヘッドハンティング

参考文献

(社)日本不動産鑑定協会国際委員会邦訳『最新国際評価基準』

外部リンク

IVS（International Valuation Standards）

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