市川内膳正

市川内膳正（いちかわ ないぜんのしょう）は、戦国時代末期から安土桃山時代にかけて武田氏に仕えた武将です。具体的な生没年や出自については、記録が乏しく不明な点が多い人物です。実名も伝わっておらず、官途名の「内膳正」で呼ばれています。

武田信玄、そしてその子である勝頼に仕え、武田氏の家臣として活動しました。内膳正は、武田氏の重要な合戦にも参加していたと推測されますが、詳細な記録は残っていません。

天正3年（1575年）5月21日の長篠の戦いにおいて、市川内膳正は兄の市川昌房とともに武田軍の一員として参戦しました。しかし、この合戦で織田・徳川連合軍の圧倒的な火力に武田軍は大敗を喫し、内膳正も兄の昌房も戦死しました。長篠の戦いは、武田氏の衰退を決定づけた戦いであり、内膳正の戦死もその悲劇を象徴する出来事でした。

内膳正には満友という子がいましたが、まだ幼少であったため、家督をすぐに継ぐことができませんでした。そこで、駒井肥前守勝英の子である昌倚が、内膳正の養子として市川家の家督を継承することになりました。昌倚は、武田氏の重臣である駒井氏の血を引く人物であり、市川家の存続に大きな役割を果たしました。

その後、満友が元服を迎えると、昌倚は満友に家督を譲り、自身は新たに別家を興しました。この家督相続の経緯は、武田氏滅亡後の混乱期における武将たちの複雑な人間関係を示しています。市川内膳正の家は、一度養子を迎えて家を繋ぎ、その後、実子に引き継がれるという、非常に稀な事例となりました。

市川内膳正に関する記録は非常に少なく、詳しい人物像を掴むことは難しい状況です。しかし、長篠の戦いで戦死した武田氏の武将の一人として、その名は歴史に刻まれています。また、その家督相続の経緯は、戦国時代の武将たちの家系存続の苦労を示すものとして、興味深い事例と言えるでしょう。

参考文献としては、『新訂寛政重修諸家譜』第四巻が挙げられます。この文献には、市川氏の系譜や家督相続に関する記述が残されており、市川内膳正に関する情報を知る上で貴重な資料となっています。

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