天正

天正元号の解説

天正（てんしょう）は日本の元号の一つで、元亀の後、文禄の前に位置づけられています。この元号は1573年から1592年までの約20年間を指し、その期間中の天皇は正親町天皇と後陽成天皇でした。さらに、この時期の征夷大将軍は足利義昭です。

改元の背景

天正の改元は元亀4年7月28日（西暦1573年8月25日）、当時の戦乱や災異が影響し、織田信長が力を持っていた時代に行われました。信長は、義昭を京都から追放することで実権を握り、改元の提案を朝廷に行いました。 『お湯殿上日記』には、義昭追放の3日後に信長が改元を要請した記録があり、この改元が信長の政権に対する歴史的な影響を与えたことを示唆しています。

ただし、朝廷内では、改元に関する議論がすでに元亀の1年以上前から行われていた紀録があります。特に元亀3年3月29日の記事には、信長と義昭のもとに改元の提案を伝える使者が派遣されたことが記されています。

しかし、義昭は改元を受け入れず、関連する経費の拠出を拒否しました。信長は義昭を非難するための文書『異見十七ヶ条』を作成し、義昭の立場を弱体化させました。結果的に、元号は朝廷の決定に基づいて「天正」と定められ、信長の意向が取り入れられた形での改元が行われたのです。これは、武家政権による正式な行為として画期的なものとなりました。

天正の由来と西暦の改暦

天正の名称は、『文選』や『老子』の教えに基づいて選ばれ、それが高辻長雅によって勧告されたことが確認されています。また、天正10年（1582年）には、大きな暦の改変がありました。この年、ヨーロッパのカトリック教会によりユリウス暦からグレゴリオ暦への移行が行われました。このため、日本における日付の西暦換算時には、注意が必要です。ただし、当時の日本は明治6年の太陽暦採用まで、旧暦と新暦のずれが生じていました。

天正年間の主要な出来事

1. 元年（1573年）: 武田高信の失敗、朝倉義景の自害、小谷城の戦いが報告されています。
2. 二年（1574年）: 越前一向一揆の発生など、地域での紛争が生じました。
3. 三年（1575年）: 長篠の戦いでの織田信長と武田勝頼の激突が決定的となりました。
4. 十年（1582年）: 本能寺の変が発生し、信長が命を落とし、その後の歴史に大きな影響を与えました。

さらに、天正年代には数多くの戦いが起こり、特に豊臣秀吉による台頭が目立ちます。天正14年には毛利城の攻略が行われ、翌年には豊臣秀吉の政権確立が進みました。最終的に天正20年には文禄へと改元されます。天正時代は、日本の歴史において、戦国を背景にした混乱と変化の時代を象徴しています。

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