市川厚一

市川 厚一（いちかわ こういち）

市川厚一は1888年4月6日に茨城県桜川市東飯田で誕生し、1948年9月4日に亡くなった日本の著名な獣医学者である。彼は特に獣医病理学の分野で活躍し、北海道帝国大学の教授として教育と研究に尽力した。市川は、山極勝三郎と共に、世界初の人工癌を発生させるという歴史的な業績を達成したことで知られている。

来歴

市川は、雨引村立雨引尋常小学校を卒業後、東京府立一中を経て、1913年に東北帝国大学農科大学（現在の北海道帝国大学）を卒業した。その後、同大学の大学院で更なる研究を進めると共に、東京帝国大学医学部の教授である山極勝三郎の研究室に特別研究生として参加した。

彼は、山極と共に癌の発生に関する研究を進め、西洋ではまだ実現されていない人工癌の発生に挑んだ。彼らは、1915年に兎の耳にコールタールを塗擦する実験によって、皮膚癌の人工的な発生に成功した。この成果は、癌の発生原因に関する当時の「刺激説」と「素因説」の論争において、「刺激説」を裏付ける強力な証拠となった。

この偉業により、市川はノーベル賞候補に挙げられたものの、最終的にはデンマークのコペンハーゲン大学のヨハネス・フィビゲルの研究が受賞することとなった。これに関しては後に誤解であったことが判明したが、受賞は取り消されなかった。1919年には「癌腫の人工的発生研究」により、山極と共に学士院賞を授与された。

その後、市川は北海道帝国大学に戻り、講師及び助教授を経て1925年には教授に昇進し、後進の育成にも尽力した。なお、山極の三男である山極三郎は、北大農学部に進学して市川から指導を受け、彼の病気による退官後には市川の研究室を引き継いで二代目主任教授となった。

主要論文

市川厚一の業績は多くの論文に記録されており、彼の研究は科学界でも高く評価されている。以下は彼の著名な論文の一部である。

• - 市川厚一、「山極市川の人工的癌腫(第二報告)」『中央獸醫會雑誌』29巻10号（1916年）p.642-648、doi:10.1292/jvms1888.29.642
• - 山極勝三郎、市川厚一、「人工的癌腫ノ發生ニ就テ(第四報告)」『癌』11巻2号（1917年）p.163-174、doi:10.20772/cancersci1907.11.2_163
• - 市川厚一、「所謂胸腺腫(Thymoma)ニ就テ」『癌』11巻3号（1917年）p.253-282、doi:10.20772/cancersci1907.11.3_253
• - 市川厚一、「新竹地方に於ける牛の地方病血尿病及び之に伴ふ膀胱腫瘍に就て(第一囘報告)」『中央獸醫會雑誌』33巻8号（1920年）p.461-465、doi:10.1292/jvms1888.33.461

関連項目

市川厚一の業績は、現在も続く癌研究に大きな影響を与えた。彼が関わった研究や活動は「癌研究会」や「発癌性」といった関連分野にシンパシーを示し、多くの研究者に影響を与え続けている。

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