市川右團次 (初代)

初代市川右團次の生涯と影響

初代市川右團次（1843-1916）は、幕末から大正初期にかけて日本の上方歌舞伎界で重要な役割を果たした著名な役者です。本名は市川福太郎であり、役者としては初代市川右團次を名乗りました。彼の屋号は初めは鶴屋でしたが、後に髙嶋屋に改めました。彼はさまざまな俳名や雅号を持ち、隠居名は市川齊入です。演技力に加えて、彼の華やかな演出スタイルは多くの観客を魅了しました。

来歴

市川福太郎は四代目市川小團次の実子でしたが、幼少期に父は離婚し、養子を迎え入れたことから、福太郎はあまり期待されていませんでした。母方の親戚に丁稚奉公として出され、役者になる道は険しいものでした。しかし、福太郎は芝居への興味を持ち続けました。1852年に本名で初舞台を踏んだ後、彼のキャリアは急速に発展しました。

1862年、福太郎は江戸に進出し、父と共演する道を選びますが、家庭での不和が彼を再び上方へ戻らせました。この年、初代市川右團次を名乗り、彼の屋号の選定には養育家の名が反映されています。その後、彼は二代目尾上多見蔵に才能を見出され、舞台の人気者となりました。特に、東京での彼の演技は新しい風を吹き込み、観客を引き寄せました。

芸風と特徴

右團次の演技スタイルは、その時代のケレンをうまく取り入れたものでした。早替わりや宙乗りといった派手な演出は当初は批判を受けがちでしたが、彼の技術はその批判を凌駕するものでした。特に、宙乗りや特性ケレン「宙ギバ」は高難度の技であり、多くの観客を驚かせました。

父・小團次や恩師・多見蔵から受け継いだ技術を基に、右團次は様々な役を演じることができました。舞踊においても高い技術を持ち、幻想的な演出が特徴でした。舞台『操三番叟』では、舞とケレンが融合したパフォーマンスを披露し、大きな話題を呼びました。1878年には、パリを舞台にする演目で全てのキャラクターが洋装の赤毛という現代的な試みに挑戦し、これが絶賛されました。彼の舞台では、技術に新しさを加えながらも、伝統を大切にする姿勢が見られました。

引退とその後

1909年には市川齊入を襲名し、その後、若い世代への道を開く形で長男に二代目右團次を継がせました。引退後も表舞台から離れ、静かな人生を送ることとなりますが、彼の影響は歌舞伎界にとって大きなものでした。1916年に亡くなるまでには、彼のスタイルと演技は多くの後進に受け継がれ、その伝統は現在にも息づいています。

右團次の人柄は温厚で教養豊かであり、茶道などにも深い理解を示しました。彼の人望は広く、教え子たちに強い影響を与えました。彼の家系からは、二代目市川右團次やその後継者たちが出てきており、彼の芸風は後世に受け継がれていきます。右團次のさまざまな要素は現代の「スーパー歌舞伎」にも色濃く影響しており、彼の芸術は日本の文化にとって欠かせないものとなっています。

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