市川團蔵 (2代目)

二代目市川團蔵：夭折の天才役者

江戸時代中期を代表する歌舞伎役者、二代目市川團蔵。その短い生涯は、多くの謎と惜しまれる才能で彩られています。宝永7年(1710年)の生まれとされていますが、享保元年(1716年)生まれとする説もあり、確かな生年は定かではありません。屋号は三河屋、俳名は市紅、紋は三升を使用していました。

初代市川團蔵を父に持ち、二代目市川團之助を兄として、歌舞伎役者の家系に生まれました。幼名は市川市三郎。父のもとで鍛錬を積んだ後、各地を巡業する経験を積みます。しかし、元文5年(1740年)4月、父の急死をきっかけに江戸に戻り、舞台に立つこととなります。同年7月には、見事に二代目市川團蔵を襲名。名門の期待を一身に背負い、活躍が期待されました。

しかし、その期待を胸に抱いたまま、同年10月、わずか31歳(享保元年生れ説では25歳)という若さでこの世を去ります。彼の死は、多くの観客に深い悲しみをもたらしたに違いありません。短いながらも華麗な舞台人生は、多くの人の記憶に深く刻み込まれたことでしょう。

もし彼が長生きしていたら、どのような名演を私たちに見せてくれたのでしょうか。想像するだけで胸が締め付けられます。その才能は、残念ながら十分に開花することなく散ってしまいましたが、彼の存在は歌舞伎史に燦然と輝く、永遠のスターとして記憶されています。

なお、彼の死後、二代目市川團蔵の名跡は義弟にあたる二代目市川團三郎が継承しました。この継承は、二代目市川團蔵の演技を受け継ぎ、歌舞伎界に貢献する後継者を見つけるという、当時の歌舞伎界における重要な伝統を反映しているといえるでしょう。

彼の墓は、東京都杉並区の法照寺にあります。現在も多くのファンが、その墓前に足を運び、天才役者の冥福を祈っているのではないでしょうか。彼の短い生涯は、儚くも美しく、歌舞伎界に残された大きな謎と、惜しまれない才能の象徴として、後世に語り継がれていくことでしょう。

参考文献
野島寿三郎編　『歌舞伎人名事典』（新訂増補）　日外アソシエーツ、2002年

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