市川小團次 (5代目)

五代目 市川 小團次（いちかわ こだんじ）

五代目市川小團次は、1850年9月23日に生まれ、1922年5月6日に亡くなった明治時代の著名な歌舞伎役者です。本名は須原清助であり、彼の屋号は高島屋、また俳名として升若や米升も名乗りました。彼は名優である4代目市川小團次の子供として生まれ、幼少期から歌舞伎の道に進むことが期待されていました。

初舞台と名跡の襲名

父である市川小團次が亡くなった翌年、1867年7月に市村座にて「市川子團次」として初の舞台を飾ります。明治12年には新富座にて「松栄千代田神徳」に出演し、本来の名跡である小團次を襲名しました。この襲名は、養母であるお琴の強い意向によるもので、初めから清助が小團次を名乗ることが決まっていたと言われています。

演技スタイルと役柄

小團次は、特に世話物の役に秀でており、「籠釣瓶」における冶六や、「壺坂霊験記」の沢市、「沼津」の平作、また「新版歌祭文・野崎村」の久作といった幅広い役柄をこなしました。さらに、舞踊を生かした演技でも定評があり、「倭仮名在原系図」の蘭平なども見事に演じました。彼は小柄な体格であったため、「ちい高屋」と呼ばれる愛称でも知られています。

一座の長老としての役割

初代市川左團次が1893年に明治座を設立して以降、小團次は兄弟と共に活動するようになります。左團次が欧州に留学していた期間中は、一座の長老的存在として明治座の座頭を一時的に務め、若手の役者たちをサポートしました。大正時代に入ると、彼は左團次の一座に属し、歌舞伎座や他の劇場に客演するなど、広くその名を知られることとなります。

人生の晩年と家族

しかし、彼の人生は悲劇的な出来事にも見舞われました。1921年、大正10年に実子の二代目米升を失うと、精神的な落ち込みが重なります。翌年の1922年、出演予定の本郷座での稽古中に体調を崩し、5月6日に62歳で亡くなりました。

次世代への影響

小團次には、二代目市川米升という子がおり、さらに彼の孫にあたる三代目市川子團次は、戦後も歌舞伎舞台で幅広く活躍しました。彼の生涯は、歌舞伎の伝統と技術の伝承に大きく寄与したことと言えるでしょう。

彼の舞台での多大な貢献や家族への影響は、今なお歌舞伎界における重要な遺産として受け継がれています。

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