帯域制御

帯域制御（帯域制限）とは

帯域制御（帯域制限）（英語: Bandwidth control/management）とは、コンピュータネットワークにおいて、QoS（Quality of Service、通信品質）を確保する目的で、ネットワークトラフィックやパケットに対して実施される測定・制御のことです。ここでは特に、ISP（インターネットサービスプロバイダ）や携帯電話会社などの電気通信事業者において行われる帯域制御、帯域制限について詳しく解説します。

概要

有線・無線の各種ネットワークサービスは、その普及とコモディティ化に伴い、近年ネットワーク通信量が著しく増加しています。この通信量増加の主な原因は、有線ネットワークにおいては、OSイメージのような大容量ファイルやファイル共有ソフトウェア、動画共有サービスなどによる過剰な通信です。これにより、通常のHTTP/FTP通信に割り当てられる帯域が圧迫されています。特に、Winnyのような通信量を制御する機能がないソフトウェアでは、回線帯域を上限まで使い切ってしまうこともあります。

これらの問題を解決するために、いくつかの制御・抑制技術が開発され、ISPなどの通信事業者によって導入されています。無線ネットワークにおいては、移動体通信の技術的な制約や電波管理上の理由から、帯域幅が有線ブロードバンド回線と比較して狭くなっています。無線ブロードバンドの普及が進む一方で、スマートフォンなどの大容量通信を行う端末の普及や、テザリングによる過剰な通信により、帯域の圧迫やバックボーンの負荷増大が生じています。その結果、通信の混雑や障害が頻発しており、回線への負荷軽減や事業収入の安定化のために、多くの無線通信事業者（MVNOを含む）が帯域制限を導入しています。

帯域制御の目的は、一般的に「最高速度の規制」ですが、「最低速度の規制」を行う実装も存在します。これは、帯域保証などの目的で利用されます。

実装

帯域制御は、主にゲートウェイの近くに制御専用のアプライアンスサーバを設置して監視するケースが多く見られます（例：シマンテック PacketShaperシリーズ）。フリーのソフトウェア実装としては、産業技術総合研究所が開発したLinuxカーネル動的組み込み型のPSPacerなどが有名です。

技術（TCP/IP）

帯域制御には、様々な技術が用いられています。

CAR (Committed Access Rate): 特定のトラフィックに保証された帯域幅を提供します。
RED (Random Early Detection): 輻輳（ふくそう）を早期に検出し、パケットの破棄をランダムに行うことで、ネットワークの安定化を図ります。
WRED (Weighted Random Early Detection): REDを拡張し、トラフィックの種類によってパケット破棄の確率を調整します。
PQ (Priority Queuing): トラフィックに優先度を設定し、優先度の高いトラフィックを優先的に処理します。
WFQ (Weighted Fair Queuing): トラフィックの帯域を公平に分割し、特定のトラフィックが帯域を独占することを防ぎます。

法との兼ね合い（特に一般回線における制御について）

一般回線において、ユーザーの同意を得ずに特定のアプリケーションの通信を規制・遮断することは、電気通信事業法第4条や憲法21条2が保障する通信の秘密に抵触する可能性があります。実際に、ぷららがユーザーの同意を前提としないWinny通信の完全遮断を試みたところ、総務省から電気通信事業法違反との見解が出されました。

一般回線の帯域制御

上記のように、通信の遮断は憲法に抵触する恐れがあるため、多くのISPは、一定期間に大容量の通信を行ったユーザーに対して、回線速度の制限を実施するようになっています。

ツールと技法

帯域制御には、以下のツールや技法が用いられます。

LANアナライザ: ネットワーク上のトラフィックを監視・分析します。
ネットワークトラフィック測定 (Network traffic measurement): ネットワークのトラフィック量を測定し、帯域制御の判断材料とします。

関連項目

帯域幅調整
トラフィックシェーピング

外部リンク

アンリツネットワークス㈱ PureFlow
シマンテック社 PacketShaper
SAISEI Networks社 SAISEI FlowCommand

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