帯締め

帯締め（おびじめ）

帯締めは、着物の着付けにおいて帯を固定するために用いる紐であり、女性の着物姿を彩る重要な小道具の一つです。帯締め紐とも呼ばれます。

歴史

帯締めのルーツは江戸時代の文化年間まで遡ります。人気歌舞伎役者が着崩れ防止のために帯の上に締めた紐が発祥とされ、その便利さから庶民にも広まりました。地方によっては「帯とめ紐」とも呼ばれていました。

当初は丸ぐけ紐が用いられていましたが、明治時代の廃刀令以降、刀の下緒として使われていた組紐が帯締めに転用されるようになります。以降、丸ぐけ紐は衰退し、組紐が主流となりました。また、江戸時代には短かった紐の長さも、時代とともに長くなり、現在では150cm前後のものが一般的です。

形態

帯締めには大きく分けて、丸ぐけと組紐の2種類があります。

丸ぐけ: 布で綿を包んだ紐
組紐: 糸を組み上げて作った紐。丸打ち（丸組）、角打ち（角組）、平打ち（平組）などの種類があります。

組紐は中国から伝わった技術ですが、日本独自の発展を遂げ、伝統工芸として確立されました。百十数本もの糸を様々な組み方で組み合わせることで、多彩な模様と色合いを表現できます。素材は主に染色された絹糸が用いられ、熟練の技術と集中力が求められます。近年では、ガラスビーズを組み込んだ現代的な帯締めも人気を集めています。

組紐の専門家である伝統工芸士は、後継者不足に悩まされており、その数は年々減少しています。

丸ぐけの帯締めは、夏用には絽、それ以外の季節には別の素材が用いられていました。

組紐の帯締めは、本来は季節を問わず使えるものでしたが、1990年頃から夏仕様のレース組が登場し、夏用とそれ以外のものとを区別する傾向が生まれました。近年では、冠組（ゆるぎ）は四季を通じて使用できるとされています。また、空調の発達により、ビーズ帯締めも季節を問わず利用されるようになり、浴衣に合わせる着こなしも増えています。

また、帯留を通して使うための「三分紐」と呼ばれる細い平打ちの帯締めもあります。

用法

着物に合わせて、季節やTPOを考慮してコーディネートします。一般的に、太いものほど格が高いとされ、金糸や銀糸を使ったものは礼装向きです。

基本的な締め方は、「お太鼓結び」の背中の部分に通して前へ渡し、帯正面で「駒結び」などの結び方でしっかりと結びます。帯の上に一本線が渡るように締め、正面から見た紐の高さは、年齢や着こなしによって調整します。余った紐端は脇に納め、慶事の際は下から上へ、弔事の際は上から下へ差し込むのが習わしです。

近年では、帯締めの色や文様を好み、観賞用や居合道用の刀剣の下緒として用いる人もいます。組紐の帯締めは元々刀の下緒として使われていたものであり、一種の先祖返りとも言えます。

種類

産地としては伊賀が有名です。巾の種類としては、三分紐などがあります。

関連項目

帯留
下緒

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