帰去来 (アルバム)

アルバム『帰去来』について

『帰去来』（ききょらい）は、シンガーソングライターのさだまさしが1976年11月25日にリリースしたソロデビューアルバムです。この作品は、同名の歌詩・エッセイ集とともに出版され、さだまさしの音楽キャリアにおける重要な一歩となりました。

タイトルの背景と制作経緯

『帰去来』というタイトルは、陶淵明の詩『帰去来の辞』から取られています。さだまさしは1976年4月にバンド「グレープ」を解散し、その後6ヶ月間の休養を経てこのアルバムの制作に取り組みました。この間、彼は職を求めたりもしましたが、最終的には音楽に戻り、自らの作品を発表することに決めました。初めは新たなユニット結成を考えていましたが、その後、渡辺俊幸がプロデューサーとしてさだをサポートすることになりました。

このアルバムは、売上累計64万枚を記録し、多くのファンに支持されています。さだは、グレープ時代から楽曲の解説文を書くことが特徴でしたが、このアルバムには個々の楽曲に対する解説が存在しないのが少し珍しい点です。しかし、次作『風見鶏』以降は再び全楽曲の解説を行っています。後に、歌詩集『時のほとりで』（新潮文庫）において、『帰去来』収録曲への解説も新たに執筆されました。

ジャケットデザインのエピソード

アルバムのジャケットには、さだが和服の女性と話しているセピア色の写真が使用されています。この写真は、通りすがりの女性から道を尋ねられた時に、さだの友人であるカメラマン・森田研作によって偶然撮影されたものです。後に、この女性を見つけるために多くの努力が必要だったといいます。このアルバムのジャケットは、1981年にリリースされたベストアルバム『昨日達…（イエスタデイズ）』のデザインのパロディとしても扱われました。

収録曲とその特徴

アナログA面

1. 多情仏心
この短い楽曲は小柳ルミ子の「ほたる列車」をアレンジしたものです。
2. 線香花火
ソロデビューシングルとしてリリースされ、長崎の伝統的な情景を描いています。
3. 異邦人
失った恋人を思い出しながら、自分の居場所を感じなくなる様子が綴られています。
4. 冗句（ジョーク）
恋する男性のコミカルな感情が描かれています。
5. 第三病棟
幼い患者との別れの悲しみを描いた作品です。
6. 夕凪
夕暮れに恋人を思い出す内容です。

アナログB面

1. 童話作家
グレープ時代からの楽曲で、初演はラストコンサートで行われました。
2. 転宅
少年時代の家庭環境の変化を歌った自伝的なテーマ。
3. 絵はがき坂
実在しない坂を舞台にした楽曲で、長崎の風景が色濃く描かれています。
4. 指定券
故郷に帰る決意を歌った作品で、東京駅のアナウンスが印象的です。
5. 胡桃の日
ロック調の曲で、スリリングなアレンジが特徴。
6. 多情仏心
アルバムの統一感を出すために使用される手法が見られます。

参加したミュージシャン

リードボーカルや楽器演奏に関わった多くのミュージシャンが参加しており、さだまさし自身も多様な楽器を演奏しています。特に、トイ・ピアノの使用が際立っており、さだの創作スタイルを象徴しています。

結論

『帰去来』はさだまさしの音楽人生における重要なアルバムであり、彼の豊かな表現力と詩的な感受性が詰まった作品です。このアルバムは今なお多くの人々に愛され、聴き継がれています。

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