常会

常会（じょうかい）は、日本の国会の活動期間である会期の一つであり、一般的には「通常国会」という名称で広く知られています。

憲法上の位置づけと目的
日本国憲法は、国会を国権の最高機関と位置づけ（憲法第41条）、また、毎会計年度の国家予算を必ず議決しなければならない（憲法第86条）ことから、常会を「毎年一回」召集することを義務付けています（憲法第52条）。この規定は、国家運営の根幹をなす予算の審議・決定を中心に、国の重要事項を定期的に検討するための基本的な枠組みです。

召集時期と呼称
常会は、国会法第2条に基づき、毎年一月中に召集されることが慣例とされています。これは、かつて12月召集が常態であった時期に、年末年始の官公庁休日に伴う国会の自然休会が会期日数を無駄に消費していた点を改善するため、1991年の国会法改正で変更されました。
常会では、主に翌年度の国家予算案とその関連法案、特に税制法案などが審議されることから、「予算国会」と呼ばれることもあります。また、「常会」という呼称は、大日本帝国憲法第43条の用例を受け継いだものであり、現代的な言葉で言えば「通常会」や「定例会」にあたります。

召集と開会
国会の召集は、日本国憲法第7条第2号に列挙される天皇の国事行為の一つです。常会の召集に関する実質的な決定権は、憲法には明確な規定がありませんが、内閣がその権限を有すると解釈されています。召集にあたっては、召集詔書を少なくとも10日前に公布する必要があります。

召集後の早い時期、通常は召集当日か数日以内に、天皇陛下のご臨席を仰ぎ、参議院の本会議場において開会式が催されます。この式典は、旧帝国議会が貴族院議場で行っていた開院式の慣例を受け継ぐもので、天皇の玉座を設置するスペースが参議院本会議場にあるため、衆議院議員もこちらに移動して参列します。開会式に先立ち、両院では短時間、議員の議席を指定するための本会議が行われます。
開会式終了後、会期の冒頭には政府の施政方針などを説明するための重要な演説が行われます。内閣総理大臣による施政方針演説を筆頭に、財務大臣、外務大臣、経済財政政策担当大臣がそれぞれ演説を行い、これらがその後の国会審議の出発点となります。

会期と計算方法
常会の法定会期は150日間です。この期間は、国会法によって定められています。ただし、会期中に衆議院議員または参議院議員の任期が満了を迎える場合は、その満了日をもって会期は終了します。
会期の延長は一度だけ認められています。
会期日数の計算においては、実際に本会議や委員会で審議が行われたかにかかわらず、召集日から祝休日を含む全ての日が算入されます。国会の休会期間中も、その日数は会期から除外されず、休会によって会期が後ろ倒しになることはありません。

毎年一回召集に関する解釈と過去の事例
憲法第52条の「毎年一回召集」という規定については、暦年（1月1日から12月31日まで）ごとに必ず1回召集が必要であるとする説と、前回の会期終了から1年以内に次の常会を召集すればよいとする説があります。衆参両院の議院法制局は明確な立場を示していませんが、たとえ前者の説をとるとしても、衆議院の解散総選挙など合理的な理由がある場合には、暦年中に常会が召集されない事態も例外的に許容されるとの解釈をとっています。
実際に暦年中に常会が召集されなかった例は、過去に4回存在します（1969年、1972年、1983年、1991年）。最初の3例は、常会の召集詔書が公布された後に衆議院が解散され、総選挙を経て特別会が召集されたことによるものです。1991年の例は、前述の国会法改正により常会の召集時期が12月から翌年1月に変更されたため、結果として1991年中に常会の召集日が存在しなかった特例的なケースであり、議院法制局は憲法に抵触しないとの見解を示しています。

会期に関する記録
最長会期記録は245日間（第189回国会）。
衆議院解散を含まない最短会期記録は144日間（第31回国会）。
* 最短会期記録は1日間（第54回国会 - 召集直後に衆議院解散）。

常会は、国家の予算を始めとする重要事項を審議・決定する、国会の最も基本的かつ重要な活動期間と言えます。

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