常慶院 (米沢市)

常慶院（じょうけいいん）

山形県米沢市南原横堀町に静かに佇む、曹洞宗に属する寺院です。山号を金華山と称し、本尊には釈迦如来をお祀りしています。寺格は四等法地と定められています。

由緒と歴史

常慶院の起源は、室町時代前期の応永5年（1398年）に遡ると寺伝では伝えられています。当時の開創は、上杉氏の家臣であった市河房綱によるとされています。もともとは信濃国高井郡に位置していましたが、上杉氏が会津を経て米沢へ移封されるのに伴い、市河氏もまたこの地に移住し、それに従って常慶院も米沢に移転してきたとされています。

ただし、興味深いことに、信濃国には会津移封後に市河氏の旧城址へと寺地を移した常慶院が現在も存在しており、こちらの寺伝でも同じく応永5年を開山としています。これは、市河氏の歴史と深く関わる両寺院の複雑な由緒を示唆しています。

菩提寺としての役割

米沢の常慶院は、上杉氏の重臣であった市河氏だけでなく、米沢藩において侍組分領家として重きをなした竹俣氏の菩提寺としても歴史を刻んできました。境内には、米沢藩の要職を歴任した竹俣当綱（たけのまた まさつな）や、その後の竹俣厚綱（たけのまた あつ綱）といった、歴代の竹俣氏当主の墓が数多く建立されています。

著名な人物の墓と逸話

また、常慶院の境内には、江戸時代に活躍した剣術家、吉田一夢（よしだ いちむ）の墓もひっそりと佇んでいます。吉田一夢は、米沢藩主上杉治憲（鷹山）が藩政改革のために招聘した儒学者、細井平洲（ほそい へいしゅう）に対し、当初流布していた根拠のない風評を信じ込み、平洲を暗殺しようと計画したという衝撃的な逸話が伝えられています。しかし、実際に細井平洲に会ってみると、その人柄が風評とは全く異なる優れた人物であることを悟り、暗殺を断念したとされています。この一件の後、吉田一夢は上杉治憲に夜話に召されるほどの信頼を得たとも云われており、その波乱に満ちた生涯の一端を常慶院の墓が今に伝えています。

伝承

常慶院には、古くから語り継がれる伝承も残されています。その一つが、狐が登場する「分福茶釜」の物語です。この伝承は、常慶院の歴史や文化に彩りを添える要素となっています。

このように、常慶院は単なる寺院としてだけでなく、上杉氏や米沢藩の歴史、そしてそこに生きた人々の物語を今に伝える、貴重な歴史的・文化的遺産といえるでしょう。

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