常書鴻

常書鴻の生涯と業績

常書鴻（じょうしょこう、1904年4月6日 - 1994年6月23日）は、中国における敦煌石窟の保護と研究に多大な貢献をした著名な画家です。中華民国から中華人民共和国の時代にかけて活躍し、その功績から「敦煌の守り人」と称されるようになりました。彼は敦煌文物研究所の名誉院長として、敦煌の文化遺産を守るための様々な取り組みを行い、敦煌学の発展に寄与しました。

幼少期と教育

常書鴻は、中国・浙江省杭県（現在の杭州市）に生まれ、5人兄弟の次男として育ちました。1923年には浙江省立甲種工業学校の染織科を卒業し、その後1927年にフランスへ留学しました。フランスでは油絵を学び、1935年にはパリでの個展を開くに至ります。

帰国後の1936年には、中華民国教育部からの要請を受けて、国立北平芸術専科学校の教授に就任しました。しかし、彼の芸術家としての道は、数々の試練に満ちていました。

敦煌への興味

常書鴻が敦煌に注目し始めたのは、1935年にセーヌ河畔の古書市で『敦煌図録』を見つけたことがきっかけでした。敦煌の石窟芸術に魅了された彼は、1940年には昆明で自身の油絵展を開催し、その後も敦煌に関する研究を進めました。

敦煌芸術研究所の設立

1944年に国立敦煌芸術研究所が設立され、常書鴻は所長に就任しました。この研究所では莫高窟の保護活動や壁画の模写が行われ、常書鴻はその中心的な役割を果たしました。特に、敦煌芸術の重要性を広く知らせるための研究展も積極的に開催されました。

挫折と復活

文化大革命の影響を受け、1966年から1972年までの間は批判の対象となりました。しかし、彼はいかなる逆境にも屈することなく、美術教育の発展に貢献し続けました。1978年に所長として職務に復帰し、再び敦煌文物研究所の発展に寄与しました。

国際的な活動

常書鴻は国内だけでなく、国際的にも活動を展開しました。1958年には日本で敦煌芸術展を開催し、多くの人々に敦煌の魅力を伝えました。そして、1980年代には日本の大学に招かれ、講演を行うなど積極的に交流を深めました。

また、彼は著作活動も活発であり、多くの書籍を残しています。中でも『敦煌の芸術』や『敦煌の風鈴』などは、広く評価されています。

最後の年々

1990年には名誉博士号を授与されるなど、その業績は国内外で高く評価され続けました。常書鴻は1994年に世を去りましたが、彼の功績は敦煌の石窟芸術に対する理解を深め、後世に伝える重要な役割を果たしました。

まとめ

常書鴻は、敦煌の文化遺産を守り育てるために生涯を捧げた偉大な画家です。彼の影響は今もなお、敦煌学や石窟芸術の研究において色濃く残っています。彼の業績や思想は、多くの人々にとってインスピレーションの源となり、敦煌の美しさを伝えていくことに貢献し続けています。

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