常盤橋 (日本橋川)

常盤橋：歴史と現代が交差する場所

常盤橋は、東京都千代田区大手町と中央区日本橋本石町の間、日本橋川に架かる橋です。実は、「常盤橋」という名の橋は二つ存在し、上流側には歩行者専用の石橋である常磐橋、下流側には関東大震災後の復興計画で建設された道路橋である常盤橋があります。これらは70メートルほどの間隔で並び、どちらも2連アーチ構造が特徴です。

歩行者専用の石橋は、区別のため「磐」の字を「般」の下に「石」と書き、「旧常磐橋」と表記されることもあります。

常盤橋の歴史

常盤橋の起源には諸説あります。

太田道灌と親交のあった正宗龍統の記録に登場する「高橋」を、現在の常盤橋に比定する説がありますが、これは議論の余地があります。一方で、1568年には、北条氏政が江戸城防衛のために高城胤辰を駐屯させた「江城大橋宿」が、大橋（常盤橋）のそばにあったとする説も存在します。

徳川家康が江戸を再整備する以前は、江戸城と大橋（常盤橋）を中心とした東西の軸が陸路の要であり、江戸城の西は鎌倉や府中へ、大橋を通る東は浅草を経由して奥州や房総へと繋がっていました。

元々「大橋」と呼ばれていたこの橋は、江戸城大手門から浅草へ向かう本町通りに架けられていました。浅草に通じることから「浅草口橋」とも呼ばれていましたが、日本橋川自体が家康の関東移封後に開削されたとする説もあり、その場合、常盤橋の存在もそれ以降ということになります。

1629年、本町通りが日本橋川を渡る位置に常盤橋門が設置され、この頃から「常盤橋」の名が使われるようになったと考えられています。「常盤」の由来には、「色かへぬ松によそへて東路の常盤のはしにかかる藤浪」という古歌や、徳川氏（松平氏）の繁栄を願う意味が込められているという説があります。

その後、江戸の交通の中心は日本橋に移りますが、常盤橋から浅草方面へ向かう道筋には、運送業者に由来する「伝馬町」や「馬喰町」といった町名が残り、賑わいを見せていました。

明治時代に入り、木造橋から石造アーチ橋に架け替えられましたが、手狭だったため、関東大震災後の復興計画で少し離れた場所に幅広の常盤橋が建設され、旧橋は「常磐橋」と呼ばれるようになりました。常盤橋門は明治初期に解体され、石垣のみが残されましたが、その周辺は常盤橋公園として整備され、石垣保存に尽力した渋沢栄一の銅像が建てられています。

2007年には、常磐橋・常盤橋ともに千代田区景観まちづくり重要物件に指定され、2020年には土木学会選奨土木遺産にも選ばれました。

旧橋は、都内に現存する最古の石橋であり、東日本大震災の影響で損傷し通行止めとなっていましたが、約7年の歳月をかけて修復され、2021年5月10日に再開通しました。

周辺地域では「常盤橋街区」として大規模な再開発計画が進められており、千代田区はここを「古き良き都心の象徴として整備していく」としています。

常盤橋御門・常磐橋の歴史

常盤橋周辺の歴史を年表形式でまとめました。

1606年：江戸城外郭工事開始
1629年：外郭諸門が築かれる
1657年：明暦の大火で常盤橋門・常磐橋が修復
1703年：地震で常盤橋門・常磐橋が修復
1806年：火災で常盤橋門・常磐橋が修復
1849年：大地震で常盤橋門・常磐橋が修復
1855年：大地震で常盤橋門・常磐橋が修復
1873年：常盤橋門の渡櫓などが撤去
1877年：小石川橋門の石垣一部を使い「常磐橋」が造られる
1923年：関東大震災で常盤橋と道路が建設
1928年：国史跡「常盤橋門跡」に指定
1933年：常盤橋公園が開園
1934年：常磐橋の補修工事
1965年：常盤橋公園が千代田区へ移管
1969年：高速道路建設で常盤橋門石垣が解体修理
1986年：千代田区が常盤橋門石垣を解体修復
2011年：東日本大震災で常磐橋が損傷
2021年：常磐橋の修復工事が終了し再開通


常盤橋は、歴史と現代が交錯する場所として、これからも多くの人々に親しまれていくことでしょう。

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