高城胤辰

高城胤辰（たかぎ たねとき）

高城胤辰は、天文6年（1537年）に生まれ、天正10年12月16日（1583年1月9日）に没した戦国時代から安土桃山時代にかけての武将です。千葉氏の家臣であり、下総国小金城（現在の千葉県松戸市）を居城としていました。父は高城胤吉、母は千葉勝胤の娘です。

生涯

父親と同様に、高城胤辰は当初北条氏との協調路線を採っていました。しかし、永禄3年（1560年）に上杉謙信が関東に出兵すると、主君である千葉胤富に従い、一時的に北条氏から離反します。翌年には北条氏への復帰を許されますが、その代償として、上杉方に追われていた古河公方足利義氏に小金城を仮の御所として提供することを余儀なくされました。

永禄7年（1564年）には、父が中山法華経寺に認めた諸権利を追認する文書を発行しており、この頃に家督を継承したと考えられています。同年には、第二次国府台合戦で約千騎を率いて北条軍に参加しました。永禄9年（1566年）には、本佐倉城の千葉胤富を攻めた上杉軍を、北条氏の援軍を得て打ち破るなど、武将としての活躍が見られます。また、この時には小金城も一時上杉軍によって包囲されています。

さらに、原氏が臼井城へ本拠を移したことに伴い、原氏が維持困難となった栗原・船橋の領地が胤辰に譲渡されました。しかし、その過程で千葉氏を中心とした統制は次第に解体され、千葉氏、原氏、高城氏ともに北条氏の傘下に入り、同氏の一家臣へと転換していきました。

永禄11年（1568年）には、北条氏政から江戸城の防衛のため、「江城大橋宿」への駐屯を命じられました。大橋宿は、現在の常盤橋付近にあったとされる江戸城下の宿場です。また、この時期には古河公方足利義氏との関係を深め、天正5年（1577年）には下野守の受領名を与えられています。同年正月には、手賀沼周辺で捕獲されたとみられる白鳥を献上し、その際に下野守の受領名を授けられました。翌年以降も、正月に白鳥と太刀を献上しており、この献上が許されたのは、関東の有力領主のみでした。

当時の高城氏は、古河公方、千葉氏、北条氏という複数の主家を持つ状態にありました。さらに、原氏との関係を考慮すると、4つの主家が存在していたことになります。天正7年（1579年）には、小田原城郊外の箱根温泉で湯治をしていたことが、京都大徳寺の僧侶への書状で確認できます。

一方で、この頃から領国経営にも積極的な姿勢が見られるようになり、後の江戸幕府による小金牧や行徳塩田の経営への萌芽が、高城氏の統治時代に存在していたと考えられています。天正6年（1578年）には、船橋大神宮の門前町の諸役を免じて自治を許し、天正9年（1581年）には市川宿に喧嘩口論や盗賊行為、博打などを禁ずる制札を出すなど、領内統治に力を入れています。天正10年（1582年）の天正壬午の乱で徳川軍と対峙中に病に倒れ、息子である高城胤則への家督相続が認められた後、病没しました。

娘は大道寺直次の正室となった他、原胤栄の正室が胤辰の妹あるいは娘であると推定されています。

参考文献

千野原靖方『戦国房総人名辞典』（初版）崙書房、2009年
「本土寺過去帳」

関連項目

高城氏
小金城

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