常磐松町

常磐松町の歴史と変遷

常磐松町（ときわまつちょう）は、かつて東京都渋谷区に存在した町名です。今の東1丁目、東4丁目、渋谷4丁目、広尾3丁目にまたがるこの地域は、1928年に設置されました。その地名は、旧地名である東京府豊多摩郡渋谷町大字下渋谷字常磐松に由来しています。

地名の由来

「常磐松」という名は、古くからこの地域にあった松の木に由来します。この松の木は「千両の値打ちが付くほどの銘木」と讃えられる美しさで知られ、多くの人々に親しまれていました。元の漢字は「常盤」でしたが、「皿は割れるから」という理由で「常磐」に改められました。

この地は幕末の薩摩藩島津家の土地であり、明治時代には1912年頃まで皇室の「御料乳牛場」として使用されていました。当時、牛乳は皇室に献上されており、現在の常陸宮邸から青山学院初等部にかけて広がるこの地域には、その名残が色濃く残っています。

町名の変更と消滅

常磐松町は1966年の住居表示実施に伴い、一部の道路敷を除いて「東」と「渋谷」に分割され、実質的に消滅しました。残った部分は同年7月に広尾3丁目に吸収され、現在では常磐松に関連する地名はビルやマンションの名称にのみ残っています。また、渋谷区立常磐松小学校の名称にもその名は引き継がれています。

常陸宮邸と教育機関

1964年、常陸宮家の創設に伴い、常磐松町に位置していた常盤松御殿が宮邸として指定されました。これは正仁親王の兄、後の明仁上皇が住んでいた東宮御所の跡地でもあります。

この地には教育機関も多く存在していました。例えば、東京農業大学の前身である東京農学校は1898年に常磐松御料地に移転し、1945年の東京大空襲で校舎が焼失した後、青山学院に売却されました。これによって、現在も青山学院がこの地に校舎を持っています。

また、國學院大學とその母体の皇典講究所は1923年に常磐松へ移転し、今もこの地に根付いています。実践女子学園も1903年に常磐松御料地に移転し、現在も中学校と高等学校が残っています。なお、実践女子大学の学園祭は「常磐祭」と呼ばれています。さらに、トキワ松学園は1916年に設立されましたが、戦災で校舎が焼失し、1948年には目黒に移転しました。

常磐松にまつわる歴史的人物

常磐松には多くの歴史的人物が関連しています。江戸時代末期、天璋院篤姫は輿入れのためにこの地に住んでいました。また戦前には、玄洋社の指導者など多くの著名人が居住していた記録があります。作家の志賀直哉や今井達夫も、この地域で生活したことで知られています。

総括

かつての常磐松町は、その豊かな歴史と文化、教育機関の発展に大きく寄与してきました。現在、町名はすでに存在しませんが、その名が今も多くの人々の記憶に残っています。常磐松に由来する名称は今日でも様々な形で残っており、この地域の歴史は今もなお人々に影響を与えています。

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