常総ルート (高速バス)

常総ルート：東京と茨城県南西部を結んだ高速バスの歴史

常総ルートは、かつて東京都心と茨城県南西部を結んでいた高速バス路線の総称です。この路線は、鉄道が直接都心にアクセスできない地域において、重要な交通手段として利用されていました。

運行開始の背景

1980年代以降、茨城県守谷町（現在の守谷市）では住宅開発が活発に進んでいました。しかし、鉄道網が十分に整備されていなかったため、住民からは路線バスや高速バスの整備を求める声が上がっていました。1987年、守谷町は茨城県、住宅・都市整備公団（現在の都市再生機構）、JR東日本、関東鉄道に対し、高速バスの運行を要望し、協議を重ねました。しかし、1993年時点では採算などの問題から実現には至りませんでした。その後も要望を続け、1999年2月、ようやく高速バスの運行が開始されました。守谷町では、その後も南部地域から東京駅への路線を強く要望し、2000年8月1日に南守谷線が開業しました。

路線網の拡大と利便性の向上

常総ルートの開設は、常総市や坂東市などの地域住民にとって、都心へのアクセスを大幅に向上させました。これらの地域では、最寄りの鉄道駅まで遠回りする必要があったり、バスの乗り換えが必要だったりすることが一般的でした。常総ルートは、これらの地域から直接東京駅までを結び、利便性を高めました。路線数や運行便数も拡大し、多くの人に利用されるようになりました。

つくばエクスプレス開業と路線の衰退

2005年8月24日、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスが開業すると、常総ルートの利用者は減少傾向に転じました。つくばエクスプレスは、より速く都心にアクセスできるため、高速バスの優位性が薄れたのです。2007年1月には、開業時から共同運行していたジェイアールバス関東が撤退し、関鉄パープルバスが参入しました。

路線廃止

利用者数の減少が続いたため、常総ルートは2016年12月31日をもって運行を終了し、全線が廃止となりました。長年、地域住民の足として活躍した高速バス路線は、その役割を終えたのです。

運行形態

常総ルートのバスは、全便がトイレ付き車両で運行されていました。座席は全席自由席で、予約はできませんでした。

運行会社（廃止時）

関鉄パープルバス（下妻本社営業所）
関東鉄道（水海道営業所）

運行系統（廃止時）

東京駅 - 新守谷駅入口 - 水海道駅 - 岩井

運行本数（廃止時）

1日7往復

停車停留所

常総ルートのバスは、以下の停留所に停車していました。

●:終日上下便が停車
■:平日・土曜の上下便が一部通過
○:平日・土曜の上り便のみ降車可能
△:終日上り便のみ降車可能

歴史

以下は、常総ルートの主な出来事をまとめた年表です。

1999年2月1日：水海道線（東京駅 - 水海道駅）が開業。1日20往復で運行開始。
1999年4月1日：ジェイアールバス関東が水海道線を増発し、1日32往復に。
1999年10月1日：岩井線（東京駅 - 岩井）が開業し、1日56往復に。
2000年4月1日：岩井線に辺田停留所を新設。
2000年8月1日：南守谷線（東京駅 - 南守谷）が開業。水海道線は守谷町内の一部経路を変更。
2002年2月2日：守谷町の市制施行に伴い、停留所の名称を変更。
2002年3月1日：らくらくミッドナイト守谷号（東京駅 → 新守谷駅入口）の運行を開始。
2002年12月18日：岩井線の一部を猿島町役場（後に猿島へ名称変更）まで延長。
2004年11月15日：らくらくミッドナイト守谷号を平日毎日運行に。
2005年8月24日：つくばエクスプレス開業により、南守谷線を減便。
2005年10月31日：南守谷線廃止。
2005年12月19日：らくらくミッドナイト守谷号廃止。
2007年1月10日：ジェイアールバス関東が撤退し、関鉄パープルバスが参入。水海道・岩井線を統合し減便。
2007年3月31日：「東京トク割回数券」の発売継続を発表。
2008年4月1日：停留所を一部変更し、都営浅草駅を経由。
2008年6月16日：つくばエクスプレスへの乗り継ぎ実証実験を開始。
2009年4月1日：つくばエクスプレスへの乗り継ぎ本格運用開始。
2009年11月1日：減便で合計1日16往復に。「東京トク割回数券」の発売終了、往復割引券「1ウィークリターンきっぷ」を発売。
2011年4月1日：水海道線が廃止。猿島線を減便。
2011年7月14日：3枚綴り回数券、「1ウィークリターンきっぷ」の発売終了。
2011年11月1日：岩井・猿島線を減便。水海道線が1往復のみ復活。
2013年9月30日：猿島線を廃止、水海道線も再び廃止。
2014年2月14日：全区間で運賃割引キャンペーンを実施。
2014年5月1日：通勤・通学定期券を導入。つくばエクスプレスへの乗り継ぎ廃止。
2014年5月7日：毎週水曜日に運賃割引を開始。
2016年12月31日：同日の最終便で運行終了、全線廃止。

常総ルートは、地域住民の都心へのアクセスを支えた重要な交通手段でしたが、時代の変化とともにその役割を終えました。この路線の歴史は、都市開発と交通網の発展における重要な事例として、記憶されるべきでしょう。

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