常顕寺 (上越市)

常顕寺

常顕寺（じょうけんじ）は、新潟県上越市寺町に静かに佇む、日蓮宗の寺院です。髙顔山（こうがんさん）を山号とし、特に越後国において最初に開かれた日蓮宗の寺院であると伝えられる、極めて歴史的な意義深い存在です。周辺は古くから寺町として栄え、多くの寺院が立ち並ぶ一角に位置しています。

歴史

寺の創建は鎌倉時代の建治元年（1275年）に遡ります。日蓮聖人の高弟であり、中老僧の一人に数えられる越後阿闍梨日弁（えちごあじゃり にちべん）上人によって建立されました。当初は異なる場所にあり、大瀁村（おおぶけむら）、五智（ごち）、三王屋敷（さんのうやしき）といった場所を経て、江戸時代の元禄元年（1688年）に日遄（にっせん）上人によって現在の地に再興されました。しかし、歴史は平穏一辺戸ではなく、大正4年（1915年）に発生した寺町一帯の大火災では、常顕寺も類焼し諸堂を焼失しました。それでも、人々の尽力により、わずか7年後の大正11年（1922年）までには、主要な堂宇が再建され、その法灯が再び灯されることとなりました。

寺宝と特徴

常顕寺は、その長い歴史の中で数多くの貴重な寺宝を護り伝えてきました。中でも特筆すべきは、日蓮聖人ご自身の真筆と伝わる遺文消息（ゆいもん しょうそく）です。これは、日蓮聖人の教えや思想を直接伝えるものとして、宗門内外から大変尊ばれています。また、「天拝大曼荼羅御本尊（てんぱい だいまんだら ごほんぞん）」も重要な寺宝の一つです。これらの宝物は、常顕寺が越後における日蓮宗の初期から果たしてきた役割の大きさを物語っており、信仰の対象としてだけでなく、歴史資料としても極めて価値が高いものです。

境内

現在の境内には、再建された本堂を中心に、静かで落ち着いた空間が広がっています。本堂は、寺町大火からの復興のシンボルであり、多くの人々が祈りを捧げる場となっています。

周辺環境

常顕寺が位置する上越市寺町は、その名の通り、古くから多くの寺院が集まる地域です。常顕寺の周辺には、長遠寺（ちょうおんじ）、日朝寺（にっちょうじ）、善行寺（ぜんこうじ）、常国寺（じょうこくじ）、妙国寺（みょうこくじ）、浄法寺（じょうほうじ）など、日蓮宗や他宗派の寺院が点在しており、それぞれが地域の歴史や文化を育んできました。これらの寺院群と共に、常顕寺もまた、この地域の精神的な拠り所の一つとして重要な役割を果たしています。

アクセス

常顕寺へのアクセスは比較的容易です。えちごトキめき鉄道妙高はねうまラインの高田駅からは、北西方向へ徒歩でおよそ5分ほどの距離にあり、気軽に訪れることができます。

結び

常顕寺は、越後における日蓮宗の草創期の歴史を今に伝える貴重な寺院です。度重なる苦難を乗り越え、貴重な寺宝と共にその法灯を守り続けています。静かな寺町の一角で、訪れる人々に安らぎと歴史への思いを与えてくれます。

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