平井俊顕

平井 俊顕

平井 俊顕（ひらい としあき）氏は、1947年2月27日生まれの日本の経済学者であり、現在は上智大学名誉教授の職にあります。氏の学術的なキャリアは、特に20世紀を代表する経済学者、ジョン・メイナード・ケインズの研究に重点が置かれています。

経歴

大阪府豊中市に生まれた平井氏は、学究の道を東京大学で歩み始めました。1971年に東京大学経済学部を卒業後、同大学の大学院に進み、1977年には博士課程を単位取得満期退学しました。

教育者としてのキャリアは、1978年に駒澤大学経営学部助手としてスタートし、1979年には講師に昇任。その後、1981年に専修大学経済学部助教授に転じ、1986年には同大学で教授に就任しました。1990年からは上智大学経済学部に教授として迎えられ、長年にわたり教鞭を執りました。2017年に上智大学を定年退職し、名誉教授の称号を授与されています。

研究活動

平井氏の学術的関心は、一貫してジョン・メイナード・ケインズとその経済理論に深く根差しています。ケインズの初期の著作から主著である『一般理論』に至るまでの理論的発展を丹念に追い、その再構築や現代における意義の解明に努めました。単なる理論の解説にとどまらず、ケインズの思想が形成されたケンブリッジ学派の知的伝統や、当時の社会状況との関連性も視野に入れた包括的な研究を展開しています。また、ケインズだけでなく、シュムペーターやハイエクといった他の著名な経済学者との比較研究も行い、市場経済社会のヴィジョンについても考察を深めました。研究成果は、国内外の学術誌での論文発表に加え、数多くの著作として公にされています。

主な業績

平井氏の研究は、単著、共編著、翻訳と多岐にわたります。その主なものを以下に挙げます。

単著

『ケインズ『一般理論』の再構築 財市場の「異質性-期待アプローチ」』（白桃書房、1981年）
『ケインズ研究 『貨幣論』から『一般理論』へ』（東京大学出版会、1987年）
『ケインズ・シュムペーター・ハイエク 市場社会像を求めて』（ミネルヴァ書房、2000年）
『ケインズの理論 複合的視座からの研究』（東京大学出版会、2003年）
『ケインズとケンブリッジ的世界 市場社会観と経済学』（ミネルヴァ書房、2007年）
『ケインズ100の名言』（東洋経済新報社、2007年）
Keynes's Theoretical Development : from the Tract to the General Theory (Routledge studies in the history of economics, 2008)
『ケインズは資本主義を救えるか 危機に瀕する世界経済』（昭和堂、2012年）

共編著・監修

『市場社会の検証 スミスからケインズまで』（深貝保則共編著、ミネルヴァ書房、1993年）
『経済学における正統と異端 クラシックからモダンへ』（野口旭共編、昭和堂、1995年）
『市場社会とは何か ヴィジョンとデザイン』（編著、上智大学出版、2007年）
『市場社会論のケンブリッジ的展開 共有性と多様性』（編著、日本経済評論社、2009年）
『危機の中で〈ケインズ〉から学ぶ 資本主義とヴィジョンの再生を目指して』（ケインズ学会編、監修、作品社、2011年）
『どうなる私たちの資本主義 現代市場社会の「解体新書」』（編著、上智大学出版、2011年）
『ケインズは、《今》、なぜ必要か? グローバルな視点からの現在的意義』（ケインズ学会編、監修、作品社、2014年）
『リターン・トゥ・ケインズ』（ブラッドリー・W・ベイトマン、マリア・クリスティーナ・マルクッツォ共編、監訳、東京大学出版会、2014年）

翻訳

トーマス・K.ライムズ『ケインズの講義 代表的学生のノート 1932-35年』（東洋経済新報社、1993年）
『ケインズ全集 第27巻 戦後世界の形成-雇用と商品 1940～46年の諸活動』（ドナルド・モグリッジ編、立脇和夫共訳、東洋経済新報社、1996年）
* M.C.マルクッツオ『市場の失敗との闘い ケンブリッジの経済学の伝統に関する論文集』（監訳、池田毅、伊藤宣広、黒木龍三、内藤敦之、長原徹、袴田兆彦、藤原新訳、日本経済評論社、2015年）

これらの業績は、平井氏が日本におけるケインズ研究の発展に大きく貢献したことを示しています。特にケインズの理論を多角的に分析し、現代の経済問題に応用しようとする視点は、多くの研究者や学生に影響を与えました。上智大学名誉教授として、今後もその学識は尊重されていくことでしょう。

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