平和の灯 (広島市)

平和の灯：広島の平和への誓い

広島平和記念公園に鎮座する平和の灯は、1964年8月1日に建立された、反核と恒久平和への願いを込めたモニュメントです。設計は著名な建築家、丹下健三氏によるもので、高さ3メートル、幅13メートル、奥行き8メートルの鉄筋コンクリート構造。手のひらを空に広げたような形状の中央で、絶え間なく炎が燃え続けています。

この平和の灯の火種は、全国12宗派の宗教的火、全国の工場地帯からの産業の火、そして宮島弥山の「消えずの霊火」など、様々な場所から集められたものです。これら複数の火種の融合は、多様な人々の平和への願いが一つになったことを象徴しています。1964年の点灯式は、被爆日に生まれた7人の広島の女性によって執り行われました。

平和の灯は、単なるモニュメントとしてだけでなく、幾度もの国内スポーツイベントにおいて聖火の採火地として重要な役割を果たしてきました。1990年の札幌冬季アジア大会や1994年の広島アジア大会など、平和の灯の炎は、平和へのメッセージを込めて聖火リレーを駆け巡りました。2012年のFIFA U-20女子ワールドカップでも、その聖火の火種として用いられました。

平和の灯は、平和記念公園内の原爆ドーム、原爆死没者慰霊碑、広島平和記念資料館と同一の南北軸線上に位置し、これらの施設と一体となって広島の平和への祈りを象徴する空間を形成しています。平和の灯の南側には、「平和の池」と呼ばれる池が広がり、その広さは平和の灯の建立を機に拡張されました。この池は、平和の灯よりも前に、1957年に建立された原爆死没者慰霊碑を取り囲む小さな池から発展したものです。

平和の灯の建立以前から、広島市では原爆投下によって発生した「原爆の火」が民間人によって保存されてきました。これは、被爆後の広島市内で発見された火を、一人の男性が故郷である福岡県八女市星野村に持ち帰り、現在まで受け継がれてきたものです。現在は八女市が管理する「平和の火」として、広島の平和の灯、長崎の「ナガサキ誓いの火」と共に、全国に平和の火を分火する際の重要な火種となっています。

平和の灯は、単なる火ではなく、広島、そして日本国民の平和への強い意志と、未来への希望を象徴する存在です。その炎は、過去を忘れず、未来への平和を希求する広島の人々の心の灯として、これからも静かに燃え続けることでしょう。また、平和の灯まつりとして、毎年8月1日に全国から多くの宗派が集まり、平和を祈念する行事も行われていました。しかし、1974年を最後にこのイベントは中止されています。

2006年には、平和の灯への落書き事件が発生するなど、平和の灯の維持管理には課題も残されています。しかしながら、平和の灯は、広島の人々、そして世界の人々にとって、平和への揺るぎない誓いを象徴する存在であり続けるでしょう。この灯が未来永劫、平和の象徴として輝き続けることを願わずにはいられません。

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