平和の鐘 (広島市)

広島に響く平和の鐘：歴史と願いの軌跡

広島市には、原子爆弾投下後の反核と恒久平和を願って作られた「平和の鐘」が複数存在します。平和記念公園を中心に、市内各地、そして海外の姉妹都市にもその音色は広がっています。それぞれの鐘には、広島の記憶と未来への願いが込められています。

初代の鐘とその後継たち

最初の平和の鐘は、1947年の第1回広島平和祭で鳴らされました。西洋風の振り鐘で、重さは37.5kg。平和塔に吊るされましたが、朝鮮戦争による金属不足のため1951年に盗難に遭いました。

2代目は1949年、広島銅合金鋳造会から寄贈された重さ800kgの鐘で、市民広場に設置されましたが、翌年の式典中止により、その後忘れられた存在となりました。

3代目は1952年から1963年まで使用された光元寺にあった鐘で、重さは21.5kg。光元寺は火災で焼失しましたが、鐘は残され、2012年に平和記念資料館に寄贈されました。

4代目は1964年から1966年まで使われた臨済宗観音寺の半鐘で、現在も同寺で用いられています。

平和記念公園の鐘：祈りと記憶の象徴

平和記念公園内には、現在も平和記念式典で鳴らされる5代目の鐘（1967年建立、重さ90kg）が、平和記念資料館に展示されています。吉田茂の揮毫による「平和」の文字が刻まれています。式典では、遺族代表とこども代表が鐘を鳴らします。

公園内には、自由に撞ける屋外常設の鐘もあります。高さ約1.7m、重さ約1200kgの梵鐘で、世界地図や原子力のマークが刻まれています。周囲の池にはハスの葉が植えられています。

また、平和の時計塔にはチャイムが設置され、毎日午前8時15分に鳴り響き、平和への願いを伝えています。

中央公園の鐘：忘れられた記憶の蘇生

広島市中央公園には、2代目の鐘が忘れられたまま放置されていました。キリスト教式の振り鐘で、被爆金属を使用して作られています。2013年に64年ぶりに鳴らされ、現在では毎年8月6日に市民有志による撞鐘式典が行われています。しかし、公園の再開発計画により、将来は保存されるか解体されるか未定です。

海外への平和の鐘：世界へのメッセージ

広島市は姉妹都市に平和の鐘を寄贈しています。ハワイ、ドイツのハノーファー、カナダのモントリオールなど、世界各地で平和の鐘が鳴り響き、広島からのメッセージを伝えています。

平和への願いを繋ぐ

広島の平和の鐘は、単なる鐘ではなく、過去を記憶し、未来への希望を伝える象徴です。それぞれの鐘が持つ歴史と、平和への願いは、世代を超えて語り継がれていくことでしょう。それぞれの鐘の音色は、過去からの反省と未来への誓いを、広島から世界へと届けています。

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